. ページ30
.
「ほんなら今日のデッサンはおしまい」
号令がかかると
私は近くのバスローブを羽織って小さく会釈した。
そして横の控室に行っていつも通り着替えると
出た先にこの前から参加している生徒さんがいた。
「お疲れ様です。Aさん」
「俺、目黒って言うんですけど」と涼しげに笑う彼は
描くよりあなたはモデルでは？とこちらが思ってしまうほど目立つイケメンくんで。
…因みに向井先生は彼のことを
「見たらわかる。アイツは裸見たいだけや。
毎ッ回幼児のラクガキと変わらん」と。こう評価している。
モデルである私との1対1の接触は禁止されているはずなのに彼はどう見ても私を待ち伏せているようだった。
「向井先生に怒られちゃうよ？」
「あー、はい。分かってますよ」
「…じゃあ早く帰らなきゃ」
「だったら連絡先交換しません？」
「実際バレなきゃいいんでしょ？」と彼は私に近づいて
笑いながらそっと見下ろす。
ぽっけにつっこんでいた手で私の腕を掴むと、
「こう近くで見るとやっぱめっちゃ綺麗だな」と
屈んでまじまじと見つめて呟いた。
その様子を見てなんとなくああ、この子は本当に
先生の言う通り絵が好きで通ってるんではなさそうだと思って私はため息をつく。
「早く帰りなよ」
「そーいうこと、好きなんでしょ？」
「じゃなきゃこんな仕事やらないでしょ？」と言って彼は私の身体を頭からつま先まで意味ありげに見つめた。
そして壁にトン、と押しやると
「ほら。…バレないからさ、」と囁いてそっと唇をつけようとしてきた。
「＿＿＿先生は許しまへんで、ソレは」
パッと声の先を見ると
真顔の向井先生が腕を組んで壁に寄りかかって見ていた。
すると目黒くんもやべえ、と言うようにパッと私から離れる。
ゴホンと咳払いをした向井先生は目黒くんに近づくと、
「あんな。モデルへの感謝と尊敬がなければ絵なんか描いたらあかん。神聖な裸も見たらあかんわ」
先生はさっきの彼の言葉も聞いていたのだろうか。
とても悲しそうにそう呟くと目黒くんも下を向いて
バツが悪そうな顔をしていた。
「分かったらはよ行き。本当に描きたい思ったんならまた来たらええわ」と彼の肩を叩くと、
ぺこっと頭を下げた目黒くんはその場を走り去った。
ふーっと息を吐いた先生は
とても何か言いたそうな目で私をじっと見つめていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2229人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Haruno(プロフ) - シキさん» シキ様、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません…🙇♀️🤍のお話気に入って頂けて良かったです🥹 (7月29日 19時) (
レス) id: 7ace42d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - mikuさん» miku様、お返事が大遅刻の大遅刻で大変申し訳ありません…今更…🙏🙇♀️最後まで読んでくださり本当に有難うございます…！そんな風に言って頂けて本当に嬉しい限りです🥹 (7月29日 19時) (レス) id: 7ace42d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - どのお話も最高にドキドキしました！特にラウのお話が好みすぎて…！もしよろしければ続きもみてみたいです！よろしくお願いします！ (2023年4月21日 17時) (レス) @page50 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 全部が最高でした！続編があったら読んでみたいです(_ _) (2022年11月5日 10時) (レス) @page48 id: 9190d456fa (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - みきさん» みき様、リクエストありがとうございます…！こっちも多分なんですが、ふっかさんのお話の方が長編化の可能性あるかもです…！あくまでかもなんですが（ ; ; ） (2021年9月5日 8時) (レス) id: c65c76f5bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Haruno
| 作成日時：2021年8月12日 3時
