. ページ4
昔から、有岡くんのその目を見続けることが出来なかった。
なぜか、と問われても明確には答えられない。
ただ、俺の思っていること全てを見透かしてしまいそうなその目が怖かった。
まだ性懲りもなく、彼を追い続ける俺を見ないでほしかった。
「嘘つかないでよ。俺にはわかるんだからな」
有岡くんが俺を射るように見て、
前に立ち塞がった。
いつもなら可愛いと思う図体も、今はただ、
越えられない壁にさえ感じて。
やめてくれ。
と、心がそう叫んでいるのに。
あの日と同じように、喉元で言葉が死んでいく。
何も言い返すことができなくて 、下を向けば耳にかけていた髪がはらりと顔にかかって。
光が遮られ。
その間から見える有岡くんは、
ただただ真っ直ぐに俺を見ていた。
「なんで、そんなこと…」
そんな目で見ないでよ。俺を見ないで。
ほんとに嫌なんだ。
顔を上げようとしない俺に、少し顔を歪めながら
それでも笑って、
「だって、俺…高木のこと好きだからさ」
と、そう言った。
反射的に君を見る。
胸の内が、ざらついて。
居心地の悪さに、ドクドクと異様に速くなる心音。
本当にやめてくれと、これ以上俺を苦しめないでくれと、あの日から弱くなった俺が騒ぐ。
俺は人を愛せる自信がないんだ−−。
俺はもう、誰にも見放されたくない−−。
悲しそうに笑う彼が映る。
その姿は残酷な程に、小さく影になった、
あの日の彼の姿と重なった。
52人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トルタ(プロフ) - ぽいさん» 更新も遅く、伝わりにくい文章ですがぽいさんにそう言っていただきとても嬉しく思います。コメントありがとうございます。 (2017年4月27日 19時) (レス) id: f2950f8700 (このIDを非表示/違反報告)
ぽい(プロフ) - 言葉選びが繊細で、トルタさんの人柄が手に取るように分かります...応援してます (2017年4月20日 20時) (レス) id: 97be06f220 (このIDを非表示/違反報告)
トルタ(プロフ) - A-yuy-Aさん» 自分の趣味程度の拙い文章ですがA-yuy-Aさんにそう言って頂きとても嬉しい限りです。ありがとうございます。 (2017年2月13日 23時) (レス) id: 2320849466 (このIDを非表示/違反報告)
A-yuy-A(プロフ) - こんにちは。切ない気持ちの表現とか、文章とても好きです。更新楽しみにしています。頑張って下さい。 (2017年2月13日 10時) (レス) id: 4b9d5955f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:トルタ | 作成日時:2017年2月12日 22時