花に名を ( jump×jump )

． ページ17

伊野尾side




薮は俺を猫だという。

確かに追いかけられたら逃げたくなるし、
自分のペースは崩されたくないって思うけど…。

けどさ、それは性格なだけであって、

俺は猫に似ているわけでもなく、ましてや薮から
離れていくことなんてあるはずない。





むしろ俺のほうが薮を必要としてるんだ。





もう、薮のいない世界なんて、“世界”じゃないくらいそんな日常なんていらない。





薮は知らないけどさ、俺って結構嫉妬深いの。

薮が誰かと仲良くしているのも嫌だし、
もっと言えば仕事にも行ってほしくない。

この世界に俺と薮しかいなければいいのに、
なんてこと本気で思ってる。





それに、俺が他の人のところに行くのは、
薮に気がいかないようにするためなんだから。

まあ、無駄みたいだけど…。





俺がこんなに思っているなんて、薮は知らない。

こんな俺、もし知られたら嫌われちゃうのかな？





でも、それ以上に、薮が俺に溺れていること知っているから。

このどろどろとした気持ちを伝えることは、
多分ない。

だって薮には俺だけ。

そうでしょ？





だからさ、薮。

これからも俺だけを見て生きてよ。

俺だけしか見れないくらいの、二人だけの箱庭にいよう。

そうしたら離れることなんてないでしょ？





おれもそうするからさ。

薮も、他の子に目移りなんて、しないでね。





狐の手袋【ジギタリス】不誠実・熱愛

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