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アイビー−たかいの ページ1

変わりない日常の中で、彼だけが普通じゃないと、そう思い始めたのはいつだったか。


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いつもみたいに、仕事終わりに俺の家に来て。

いつもみたいに、俺の作った質素な男飯を二人で食べていた…

のが数分前。





「たかき、ごめんね」

そう言った彼は、突拍子もなく突然で。

カタリ、と持っていた箸を置くその手は
少し震えていた。





−−変わりない日常が変わった瞬間。





俺は彼を見ることも、何がなんて問うことも出来なくて。

そんな俺に戸惑いながら下を向いた彼は、

「たかき、俺…」

口にした言葉を詰まらせ、下唇を強く噛んだ。





その姿はよく見知ったあいつと重なって。


ぐずぐずと−−。

彼と付き合っているのは俺だと断言出来るのに。

ぐずぐずと−−。

彼とあいつが一緒にいる姿が安易に
想像出来てしまう自分が嫌で。

気づきたくもなかったことに、どうしようもなく胸が痛んだ。





−−永年の愛が、熟れすぎた愛が、潰れていく。





彼がすう、と息を吸ったのがわかって。

これから言われるであろう言葉に、
俺は歯を食いしばった。


「俺ね、山田のことが好きなの…」


それでも、息が詰まる。

それは彼の言葉でペしゃんと押し潰されたような、どうしようもない痛みで。

苦しくて、泣きたくて、
今すぐにでも逃げだしたくて。





そんなの、ずっと前からわかっていたはずなのに。

彼の瞳に俺なんて映っていないことなんて。

今更なんだよ。

今更、なんてことない。





そう思うのに、やっぱり俺じゃ駄目なのかと
わめく俺がいて。





「ごめんね」

彼はそれがわかってしまうから、
何度も謝罪の言葉を並べた。

「本当に、ごめん…」

その姿はどことなく痛々しくて、イラつく。





「たかき、ごめ−」



「……もう、いいよ」





ねえ、伊野尾くん、

そんなに謝りたくなるような日々だった?

それとも、浮気していたことへの罪悪感?

そんな謝罪ならいらない。





ただ、「ありがとう」と「楽しかったよ」と
それだけでいい。





そう言いたいのに、

それさえも声にできない俺は、哀れな灰人。

言いたい言葉さえ喉元で死んでゆき、
塵になったそれは肺を機能させなくする。






俺は、息さえ上手く吐けないまま、
深い海に沈んでいくように動けなかった。

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トルタ(プロフ) - ぽいさん» 更新も遅く、伝わりにくい文章ですがぽいさんにそう言っていただきとても嬉しく思います。コメントありがとうございます。 (2017年4月27日 19時) (レス) id: f2950f8700 (このIDを非表示/違反報告)
ぽい(プロフ) - 言葉選びが繊細で、トルタさんの人柄が手に取るように分かります...応援してます (2017年4月20日 20時) (レス) id: 97be06f220 (このIDを非表示/違反報告)
トルタ(プロフ) - A-yuy-Aさん» 自分の趣味程度の拙い文章ですがA-yuy-Aさんにそう言って頂きとても嬉しい限りです。ありがとうございます。 (2017年2月13日 23時) (レス) id: 2320849466 (このIDを非表示/違反報告)
A-yuy-A(プロフ) - こんにちは。切ない気持ちの表現とか、文章とても好きです。更新楽しみにしています。頑張って下さい。 (2017年2月13日 10時) (レス) id: 4b9d5955f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トルタ | 作成日時:2017年2月12日 22時

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