雪が止むまで。【桃】 ページ14
『映画初主演、おめでとう!』
年末に映画の事を聞いて、凄く嬉しかった。
嬉しかったけど……──
窓の外は、大雪模様。
飛行機が欠航にならないかマネージャーが頭を抱えていたが、俺の問題は違う。
「さーみーしーい!」
炬燵に入っている彼女に後ろから、思いっ切り抱き付く。
明後日から、北海道で撮影。 有り難い事に、仕事は他にも沢山ある。
つまり、当分は彼女とは会えないという事だ。
「しょうがないでしょ、仕事なんだから」
体に絡めた腕は、思ったよりもあっさりと引き剥がされてしまった。
「Aは、寂しくないん?」
ちょっと悔しかったので、頬を膨らませて上目遣いという“可愛い”しか出て来ないであろう仕草で甘えてみる。
「……別に」
嘘やん! ホンマにええの!?
俺、直ぐには帰って来れへんねんで?
本当はこれ位、言ってしまいそうなところだけど、相手は大好きな彼女。
愛想を尽かされてしまったら、きっと立ち直れないから。
「あっ、そう……」
全然、気にしてへんから。
俺やって寂しくないし。 別に会えなくたって……
「ちょっ、泣かないでよ」
「だって〜、Aが〜」
もう一回。 今度は、さっきよりも強く抱き付いた。
「ごめんごめん、望が居ないと寂しいよ?」
「……ホンマに?」
「本当だよ、だって恋人でしょ?」
俺の頭を優しく撫でる彼女に、そっと触れるだけのキスをする。
「んふふ、しゃ〜ないな!」
「そうですねー」
やっぱり冷たい彼女。
でも暖かい部屋に居ると、それが丁度良くって。
「……大好き」
「知ってる」
もう一度、唇を重ねる。
会えない分、雪が止むまで充電させて。
fin.
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作者名:春影 | 作成日時:2016年3月30日 8時