3.波とバイトと君_1(野目龍広) ページ13
きっとこの気持ちを恋と呼ぶんだろう、と気づいたのは、夏休みも折り返しに近づいた頃のことだった。
「ありがとうございました」
違う味のソフトクリームを買っていった男女二人組の背中を見送りながら、いいなあ、なんて心の中で呟いてみる。活発そうな二人だ、男の子の綺麗に結い上げられた長髪が風になびいてソフトクリームに付きそうになるのを女の子が慌てて阻止している。カップルだろうか、仲が良さそうだ。そんな姿を見て、ぽわりと心に一人浮かんできてしまう人がいる。背格好は違うけれど、隣で並んで笑い合いながら歩く、そんな姿に重ねてしまい、きゅんと胸の奥で音をたててしまう、そんな人がいる。
次のお客さんの注文を聞いて用意する間に、ちらりと視線を海辺の向こうへと向けた。昼過ぎにサーフボードを抱えた彼の姿を見た気がしたから、きっと今日も波に挑んでいるんだろう。
元からなのか日に焼けたからなのか、浅黒い肌に色素の薄い短髪。大柄でたくましい体つき。きらきらと宝石みたいにきれいなアメジストの瞳は優しくて、左眼の下に二つ並んだ小さなほくろが特徴的な、あの人。
お母さんと一緒にかき氷を買いに来た男の子にブルーハワイ味を手渡したら、奥からおじさんに休憩に入っていいぞと声をかけられたので、「はい」と返事してエプロンを外した。みぞれのかき氷を作って、店の外に出る。休憩時間の度にサーフポイントを眺めに行くのが、わたしの日課みたいなものだった。
この海水浴場の海の家で夏期バイトをするようになってもう三年目だ。父方のおじさんから頼まれて、週末のかき入れ時限定で朝から晩までこうして手伝っている。結構大きな海水浴場だから、朝から晩までほとんど人が絶えることは無い。あまり人と話すのが得意じゃないわたしでも、三年目にもなれば慣れてきたのかほとんど抵抗も無くお客さんに対応できるようになっていた。
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まほし(プロフ) - Alice@Shu.Ryujiさん» ありがとうございます。和南くんも近いうちにお届けできたらと思います〜 (2017年9月10日 20時) (携帯から) (レス) id: 2cdb666f4d (このIDを非表示/違反報告)
Alice@Shu.Ryuji(プロフ) - かずにゃん待ってます♪ (2017年9月5日 22時) (携帯から) (レス) id: a0d3cca6c5 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - こちらこそ、夏のさわやかさを楽しみにしています♪個人的にはモモとリーダーの話が気になります。 (2017年5月16日 14時) (レス) id: d1f03ffdf9 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - 瑠璃さん» 閲覧、コメントありがとうございます!他作品も見ていただけて嬉しいです^^ 夏の爽やかさを出していけたらと思います、お付き合いよろしくお願いいたします〜 (2017年5月15日 22時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - ほかの作品から見始めてこの小説を読みました。なんだかすごく感じのいい文章で即お気に入り決定(*´▽`*)更新頑張ってください! (2017年5月9日 14時) (レス) id: d1f03ffdf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほし | 作成日時:2017年5月7日 20時