集中できない_hys ページ1
いきなりだが、林くんは私の彼氏だ。林くんは隣でパソコンのキーボードをたたいて仕事をしている。
こっちはずっと林くんのこと見てるのに!なんでこっち見てくれないの!そう思った私は椅子から立ち上がり、後ろから林くんに抱き着いた。
「A、何?」
「なんでもないよ?」
「うーん...」
林くんが振り返って私を見つめてくる。ああもうかっこいい…じゃなくて!今私は林くんに甘えたい気分なのだ。
「仕事中なんだから……」
「ちょっとだけ!」
私がそう言ってもなかなか離れようとしない私を見て林くんは諦めたようにため息をつくと、また前を向いてしまった。でもそれは嫌だからとかそういうんじゃなく、単に呆れているだけのようだった。
しばらくするとさすがに疲れてきたのか、林くんはうーんと伸びをした。そしてそのまま机の上に突っ伏してしまった。
「ふぅ……」
あ、寝ちゃったかな?と思ったけどどうやら違うみたいだ。顔を少し上げてちらっとこちらを見ると、すぐに視線を戻してまた顔を上げた。これは多分、眠いからじゃないな……。「ねえ」
「うん?」
「…」林くんを見つめてみる。「……あのね、俺だって我慢してるんだからそんなに見つめられたら困っちゃうんだけど」
「どうして?」
「そりゃあ……こんなに近くにいるわけだし……」
そう言いながら林くんは頭をかいた。
「Aにくっつかれてると集中できない……」
「そっかぁ……」
それを聞いて少し寂しく思っていると、「まあでも」と言って林くんは続けた。
「A」
「はい」
「今はダメだけど、これ終わったらいっぱいイチャイチャしよ」
柄にもなくそう言う林くんの顔はとても優しくて、愛おしそうな目をしていた。
「……ばか」
やっぱり林くんには敵わない。
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作者名:ねーこ | 作成日時:2023年6月11日 16時