【GIANTS】短編集6

嘘［坂本勇人］ ページ30

東京ドーム事務員です
＿＿

今日は本当についてない日









スマホを忘れて、先輩のマグカップを割って、提出を忘れていた書類を同僚に手伝わせちゃって

あ、コピーの部数も間違えた









先輩も同僚も笑顔で大丈夫と言ってくれたけど私はこんな自分に落ち込む









「…！Aちゃん！」









「は、はい！」









そんなことを考えているうちに名前を呼ばれていたらしく慌てて返事をする









亀「大丈夫？なんか疲れてない？」









「大丈夫です！ちょっとぼーっとしてしまって笑」









そうだった、ロッカーに荷物運んできたんだ









今の私が上手く笑えているかは分からないけどこんなことで落ち込んでるなんて恥ずかしくて走るようにロッカーを後にした









そのあとデスクワークをこなしてぐーっとのびをした時









坂「おい、チビー」









「チビってなに！」









聞きなれた声で聞きなれた悪口が









坂「お前既読ぐらいつけろや。



どうせ、仕事がーとかいって見んかったんやろ」









「違う、スマホ家に忘れたの！」









勇人は心配して来てくれたって分かってる、分かってるんだけど









自分にイライラを溜めていた私は勇人に当たってしまう









さっきも黙ってロッカー出てって感じ悪くなっただろうな









「…ごめん」









驚いて黙ってしまった勇人との気まずい沈黙に小さな声で謝る









坂「さっきもただぼーっとしてただけちゃうやろ」









「んーん、なんにもないよ」









勇人にも知られたくないから嘘をつく









坂「Aお願いやから、俺にだけは嘘つかんとって」









そう言って抱きしめられたら必然と涙が溢れてくるもので









泣くほどのことでもないのに弱っている時に優しくされると頬が濡れていく









そこからは涙と同じようにぽろぽろと言葉が溢れた









一通り話して泣き止んだ私









恥ずかしいところ見せちゃったや









「ごめん」









坂「なにが？」









いつもより少し優しい声









坂「またなんかあったら言うんやで？









俺の知らんとこでAが泣くのは嫌やから」









「うん、ありがとう」









こぼれた私の笑顔を見た勇人は









坂「やっと笑った」









同じように白い歯を見せて笑い返してくれた

作者です→←本音［石川慎吾］

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