【GIANTS】短編集6

☆拝啓［石川慎吾］ ページ15

「慎吾、別れよう」









慎吾のプロ一年目のシーズンが終わった12月

北海道は一面に雪が広がる









暖房をつけているはずなのに冷たいこの部屋で、耳に届くのはチッチッと規則正しい時計の音









石「え？」









それと慎吾から小さく漏れた声









「ずっと考えてたの、慎吾の夢は一軍で活躍することでしょ？

私がいたら……ね」









何日も何ヶ月も考え抜いた結果









まだ結婚していないうえ子どもができたなんて









負担が増え周りからの目が厳しくなるのが目に見えていた









石「だからって別れることないやろ

お腹におる子やって…

それにむしろAに支えて欲しいねん」









少し前かがみになった慎吾にそう言ってもらえるだけで充分で









慎吾のことは大好き
慎吾と結婚したい、一生を共にしたい









何度も話し合ったけど一方に食い下がらない私に折れたのは慎吾









私は大きくなり始めたお腹を抱え東京に
_____









『拝啓 石川慎吾様
私は東京で元気な女の子を産んだよ』









言い出したのは私、ここへ来たのも私、この子を守らなければならないのも私









それなのに今私の首を絞めているのは私の決断









無意識に野球中継をつけては慎吾の姿を探しユニフォームを握るのは









まだ慎吾が恋しいから、好きだから










美桜「ママー」









机にうつ伏せてまどろみの中で聞こえた美桜の声









ふと顔を起こせば幼い美桜の顔が









目も鼻もそっくりだからか、まだ寝ぼけているからか









慎吾がよぎるのを後者のせいにして抱き上げる









「もう寝よっか？」









美桜「うん！」









布団へ横になり腕の中に美桜を閉じ込める









美桜「くしゅぐったい！！」









「えへへ、おりゃーー」









毎晩の恒例のようにくすぐり合いっこ









この瞬間が1番の癒し









『拝啓 石川慎吾様
あなたの夢はかなったでしょうか』

＿＿









美桜「見て！」









美桜が広げてみせてくれるのは今描いたらしい絵









「これママ？」









美桜「ん！」









手を繋いで満面の笑みを浮かべる2人









「ありがとう！美桜は絵が上手だねー」









『慎吾、巨人に移籍したんだよね
美桜はこんなに元気に育っています』

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