二月の勝者-絶対合格の教室-【4】 (ページ42)

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黒木「その選考基準は...年間所得218万円以下、または給与収入400万円以下の世帯の子弟

そして奨学金希望者は入試出願前の11月中に行われる個別面談を受けていただく必要があります。

開成で学びたいにも関わらず、経済的理由からそれを断念しようとしている学生のための制度です」

島津母「先生、それって...」

黒木「はい。もしも経済的に不安をお持ちならこういった制度もある、というご紹介をしたまでです

つまり経済的理由は、順さんが開成受験を諦める理由にはならないということです」

それでも母親は暗い顔をして言った

島津母「受験をやめるのは、経済的な理由もありますがそれだけじゃないんです。受験はそもそも主人が...父親が無理矢理やらせていただけで...」

黒木「無理矢理？そうなんですか？順さん」

島津「...無理矢理ってわけじゃないよ、ママ

本当は...本当は、自分の力を試したい！俺、開成受験したい！」

島津母「順...それが、正直な気持ちなのね？」

島津「うん」

島津さんの気持ちを再確認すると母親は私たちに向き直り、言った

島津母「先生...」

黒木「はい」

島津母「先生を信頼してこの子を預けます」

こうして島津さんは第一志望開成のまま受験を続投することになった

side 佐倉

島津くんとお母様との面談が終わり、講師室に戻った

結局、島津くんのご両親は離婚を選んだものの第一志望は開成のまま...

桂「本人が望んで、その上でお母様がOKしたんだったらいいんじゃない？別にその制度を知って離婚を考え始めたわけじゃないし」

佐倉「でも、中学受験がもとで...」

桂「たまにね、「中学受験のせいで家庭が壊れた」とか言う人いるけど、言わせてもらえば元々壊れてたものが子供の受験きっかけではっきりしただけのことよ！」

声を大にしてそう言った桂先生

えっ、経験者か何か...？

そう思っていると我に返ったのかハッとして桂先生は続けた

桂「あっ、むしろ家庭を見つめ直すいいきっかけになってるんじゃない？...と、私は思うけどね

私たちは親や家族とは違う、子供たちのその後の人生に責任を負うわけじゃない。というか関わりたくてもなかなかそうはいかない」

佐倉「黒木先生は...そのギリギリのところをちゃんと分かって、子供たちやその親御さんたちと向き合ってると信じてます」

桂「そうね...」