Night Doctor ナイト・ドクター【3】 (ページ31)

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side 成瀬

仕事を終えて正装に身を包み足を運んだのは秋山さんの自宅

玄関のドアを開けるなり、頭を下げる俺に秋山さんは言った

「お帰りください。謝られたところで訴訟を取り下げるつもりはありません

だいたい家にまで押しかけてくるなんて非常識にも程があります」

「今日は手術内容に関してだけではなく、手術当日の説明不足について謝罪しに参りました。

私はただマニュアル通りに説明をするだけで、本当に秋山さんが理解をされていたのかという配慮が行き届いていませんでした。

そんな状況でリスクばかりが提示された同意書にサインを求められた秋山さんが、後になって不安に思われるのは当然だと思います。

本当に申し訳ありませんでした」

もう一度深々と頭を下げるも、思いは届かなかった。

「いいから、帰ってください」

「あの日、もし秋山さんが同意書にサインしたことを後悔されているのだとしたらその必要はありません。全て私の責任です

こちらは私が執刀した際の手術内容を記載したものです。なるべくわかりやすく書いてきたつもりです

良かったらぜひ一度目を通していただけ、」

「結構です。もういいですから帰ってください」

「秋山さん、よろしくお願いします」

「帰って！」

秋山さんは資料を叩き落とし強引にドアを閉め、鍵を掛けた。

閉ざされたドア越しに黙って頭を下げることしか出来なかった。

毎日が選択の連続だ

時には何が正解か誰にもわからない問いもある。

でも俺はきっとまた同じ問題にぶつかった時、何度でも同じ答えを選んでしまうんだろう