【窃盗】 ページ47
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「中堂さん...
これ、窃盗ですよ？」
中堂「俺は警察の奴らに『遺体を閉じて返せ、』と言われた。
だから言われた通りに返した。だが『取り出した肺を体に戻せ、』
とは一言も言われていない。」
そう言いながら中堂さんは外したゴム手袋を解剖台に叩きつけた。
「それ、『屁理屈』って言うんです。知ってますか？」
そう尋ねた私の言葉を無視して中堂さんは『プランクトン検査の結果は？』と尋ねた。
「海水の成分は検出されましたが特にめぼしいものは出ていません、」
中堂「現場の海水との比較が必要だな、」
「まだ調べるんですか！？
中堂さんは個別の案件には深入りするタイプじゃないじゃないですか...
どうしたんですか、急に...」
尻すぼみにそう尋ねる私に触れながら中堂さんは話を続けた。
中堂「考えたことがあるか？
永遠に答えの出ない問いを繰り返す人生、
今結論を出さなければもう二度と、この人物がどうして死んだのかを知ることはできない。
今調べなければ永遠に答えの出ない問いに一生向かい続けなきゃならない。
そういう奴を一人でも減らすことが
法医学の仕事なんじゃないのか？」
「中堂さんは...
何を抱えているんですか？」
中堂「...そのうち話すさ、」
そう言うと中堂さんは私を引き寄せ、片手で抱きしめた。
「わかりました。
でも一人で行動しないでください、一人で抱え込まないでください。
私は、貴方と同じ中堂班なんです」
中堂「あぁ...
黒咲、ちょっと付き合ってもらいたいところがある」
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作者名：愛音
| 作成日時：2020年4月11日 20時
