【3ヶ月】 ページ37
.
side 堂本
トレーニング室で最後のトレーニングをしているとめぐみがやってきた
「めぐみ...」
「ねぇ、ちょっと見てて？」
そう言うとめぐみは制服のまま腕立てを始めた
最初とは違ってしっかり、それにリズム良く10回
「...出来るようになったね」
「これがいっぱいいっぱい...」
「腕立ての話じゃない、怖い顔が出来るようになった。もう大丈夫、一人で立ち向かえる」
「真矢が助けてくれたから...」
「めぐみも助けてくれたのね、私のこと
...庇ってくれたんでしょ？
10円玉に私の指紋がついてなかった。すり替えてくれたのね...
そんなことしたって風間教官には敵わないのに...
...もう会えないね」
ここを辞めるのも、彼女と離れるのも哀しい選択だった
「めぐみは辞めちゃダメだよ！」
「真矢...」
私はいつも付けていた腕時計をめぐみの腕に付けてあげた
「トレーニング、続けるのよ？」
めぐみの手を握って心の中で思いを伝えた
めぐみが幼い頃に警察官にしてもらったように
‶もう大丈夫″って...
「真矢...」
「...もう一度聞きたい」
そう言うとめぐみは頷いてポケットからハーモニカを出し音を奏でた
演奏を聞いている間、涙が止まらなかった。
・
演奏を聞いてめぐみと別れ、私は風間教官のところに足を運んだ
「堂本真矢です」
「入れ」
「失礼します」
中に入って敬礼をする
教官は何も言わずに私に退校届を渡した
「失礼しました」
敬礼をして部屋を後にしようとした時、教官が声を掛けた
「しっかり想いを伝えたか」
教官は私が描いた坂根さんの絵を裏返した
あ...気付いたんだ...
一度は描いたけれど消したハーモニカを吹くめぐみと
風間教官を見ている時のAの姿
私の、一番好きな二人の瞬間
風間教官は鉛筆で薄く塗りつぶし、絵を浮かび上がらせていた
「いいえ」
「...サインして持ってこい」
「...失礼しました」
入校から3ヶ月、私は警察学校を退校した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛音
| 作成日時：2021年1月22日 18時
