【逃げるな】 ページ36
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冴島「どうされますか...？」
多恵「どうされますかって...
治る確率はどれくらいなんですか...？」
緋山「はっきり言って厳しいです...」
そんな私たちの耳に届いたのは必死に奥さんの名前を呼ぶ宮元さんの声だった
宮元「お前...血が滲んでるぞ、早く治してもらえ...」
自分が死にそうにも関わらず彼は奥さんの心配を真っ先にしていた
宮元「先生...先にお願いします...俺、大丈夫ですから...」
冴島「緋山先生、急がないと...」
無理...私には出来ない...
立ち尽くす私に声を掛けたのは橘先生だった
橘「緋山！代われ、」
橘先生は冷静に処置を行った
橘「この状況で家族に判断できるわけないだろ
ここで判断するのが俺たちの仕事だ。
いつまでも引きずるな
野上翼は帰って来ないし提訴は取り下げられた
今出来ることをしろ、」
何も出来ない自分が情けなくて、虚しくて、涙が溢れた
緋山「また間違うかもしれません、」
橘「お前がやったことは間違いじゃない、ただ結果が悪かった
逃げるな、緋山！」
‶逃げるな″
橘先生のその言葉が強く私に突き刺さった
...逃げない、絶対に。
一旦その場を離れ、他の患者の処置を行う私に駆け寄って来たのは
宮元さんの奥さんだった。
宮元さんの元に戻ると、彼の命の灯はもう僅かだった。
酸素バッグを揉んで酸素を送り続ける救急隊員に処置終了を告げ、バッグを取り外す
呼吸音は...聞こえない、
緋山「残念ですが...3時13分です、」
彼の手首に付いたタグを黒に替える
奥さんに強い眼差しで睨まれた気がした。
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作者名：愛音
| 作成日時：2020年12月21日 15時
