素敵な明日を願って...2 (ページ43)

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【負けた】ページ43

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芳雄「知ってますよ、

ずっと近くで見てるんですよ？

ただの胃潰瘍じゃないことぐらいわかりますよ、」

じゃあ...何故寄り添おうとしないのか

芳雄「でも...本人が隠そうとしてるんでしょ？

だったら信じてるフリしてやった方がいいでしょ、

ずっとそうやってきましたから、僕は...子どもの頃から」

寂しそうにそう呟いた後に彼は少しだけ笑みを見せた。

芳雄「嘘をつくならもう少し上手くつけよ、って

子どもの頃からずっと思ってました

ホント馬鹿だから...」

案外、子どもは親のことをちゃんと見ているのかもしれない

そう思った。

藍沢「そうか、」

芳雄「あとどれぐらいなんですか？」

藍沢「もって2カ月だ。このまま亡くなる可能性も高い、」

彼はシャーペンを持つ手をギュッと握りしめた。

緋山side

ICUで冴島が翼くんの身体を拭いているのをただボーッと眺めていた。

緋山「爪伸びてる...」

冴島「切っておきます、」

彼女はそう言ったものの翼くんに寄り添い、私が切ることにした。

翼くんの爪を切っていると不思議な顔をして直美さんがやってきた

緋山「すいません...私も何かしてあげられたらと」

黙って翼くんを見つめる彼女に爪切りを渡すと少しだけ笑顔を見せた。

爪を切り終わると私に礼を言いながら爪切りを返した。

直美「昨日は取り乱してすいませんでした...

翼は...本当に目を開けることはないんですか...？」

涙を流し、彼に寄り添う彼女の元にファイルを持って歩み寄った。

緋山「10日前、運び込まれた時翼くんは多発外傷でした。」

直美「...はい、」

緋山「脳挫傷、心破裂、腎損傷、下腿開放骨折...

脳外科医が減圧開頭し、心臓外科医が破れた心臓を縫い、

救急医が腹腔内出血を止血しました。

3日に渡り12人の医師が携わり、合計11時間のオペでした。

全員、死力を尽くしたつもりです...

結果、負けました

無力ですいません」

私は彼女に頭を下げた。