素敵な明日を願って...2 (ページ28)

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【生きてさえいてくれれば...】ページ28

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桃田side

藍沢先生に言われて考えを改め、書類をご両親に提出すると

2人は病理解剖を了承してくださった。

病理解剖を終え、ご両親を相談室に招く

「解剖の肉眼的所見を伝えさせてください。」

デスクに2枚の書類を並べ、解剖報告を行う

「脳の重さは1365g、脊髄の前根に萎縮が認められ

ALSの典型的状態を示していたそうです。

また、横隔膜も高度に萎縮していて呼吸不全の一因となっていました。

痰の詰まりはなく、呼吸筋の麻痺が直接死因と思われます。

病理解剖にご協力ありがとうございました...」

私の説明に俊子さんは涙を流していた。

「この書類は単なる数字や文字ではないと思います...

これは田沢さんが生きた証であり、医師としての最後の仕事だと思います。

田沢さんは入院中は隣の患者を励まし、オペを決断させました。

そして昨日は血液中の酸素濃度を何度も聞いて

冷静に、医者として自分の病と向き合おうとした。

田沢さんは最期まで医者でした、とても真似できません」

入院中の田沢さんの話をご両親に知ってもらいたかった。

文雄「ありがとう...でも...そんなに立派じゃなくても良かったのになぁ、

生きてさえいてくれれば...」

2人は涙を流した。