【夢】 ページ35
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緋山side
やるせない気持ちを抱えて私は中庭のベンチに腰を下ろしていた。
緒方「どうした、」
こんな時、いつも声を掛けてくれるのは彼だ。
その声に安心する。
緒方「いい話の後なのに沈んだ顔して、何かあった?」
緋山「...名取がね、」
そう口にして私は発言を辞めた。
緋山「ごめん、何でもない」
話題を変えるように私は緒方さんに転院先の話を持ち掛けた。
緋山「どうせだったら青南周産期医療センターに近いところがいいな、って
2つあったの」
そう言うと彼は私の目を真っすぐ見て『どっちにも行けないな』と返事をした。
緋山「そうだよね...
まだちゃんと付き合ってもないのに重すぎだわ、(笑)」
出した地図をポケットにしまいながら『ごめん、』と口にした。
緒方「そうじゃないよ、
俺、この一週間すげぇ楽しかった。
緋山先生と色々話したり、飯食ったり...
この身体になってから一番ハッピーな一週間だったよ」
急に心がざわざわと騒ぎ、嫌な予感がした。
緋山「何、急に...」
緒方「先のことも考えられるようになったし...
でもさ、そしたら近い将来同じことになるなってふと思ったんだよね」
緋山「...同じこと、って?」
緒方「俺は...馬鹿な怪我をして店を大きくする、っていうカミさんの夢を奪った。
好きな女の夢を二度も奪いたくない。
障害がある俺と一緒に居たら夢を追うどころじゃなくなる。」
緋山「何かっこつけてんの...
それとも不幸自慢?だとしたら寒すぎるんだけど、(笑)」
緒方「またそんな言い方して
そんな風に思ってないことはわかってる」
あぁ、やっぱり緒方さんには何もかもお見通しだ
涙が出そうになるのを必死に堪えた。
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作者名:愛音 x他1人 | 作成日時:2020年5月29日 17時