私の初恋。９【Shori.S】

Vict.428 ページ28

A「っ…私」




これ以上、何も出来ないのはわかってる。



一瞬でも、“どうなってもいい”と思ってしまった。




そんな私の気持ちを、勝利くんはきっと察してる。




歯止めが効かなくなる前に、勝利くんが私から離れた。



それを案じるかのように、私も着衣の乱れを整える。




―――これ以上進めば、


それこそまさに“予行練習”になっちゃう。





勝「…俺もご褒美欲しい」



突然、勝利くんがボソリと呟いた。




A「え…？」



カッターシャツのボタンを閉める私の手が、ピタリと止まる。




勝「俺がリレーで勝ったらご褒美ちょうだい？」



A「い、きなり何…っ」



勝「ダメ？」



A「…っ」



こういう時、勝利くんは甘えた口調になる。



ダメじゃない事…わかってるくせに。




勝「…そしたら俺も…プレッシャーに負けず頑張れるんだけど(笑)」


わざとらしく、悪戯に微笑み掛けてくる。



A「っ、何をすればいいの…？」



私の言葉に、勝利くんは待ってましたとばかりに嬉しそうな顔をする。



それだけで、キュンとしちゃう…。




勝「今の続き…しよ？」



A「えっ…」



それって……予行練習だよね？




そんな私の気持ちを見透かすように、勝利くんは微笑む。




勝「それとも…最後までがいい？」



ニヤリと笑う勝利くんに、全身に熱が走る。



慌てて首を横に振れば、勝利くんに笑われた。




勝「…じゃあ、俺へのご褒美は“予行練習”で決まりね？(笑)」



はっきりとそう告げられ、顔が真っ赤に染まる。




勝「何で今更照れるの(笑)前にもしたじゃん(笑)」



余裕な勝利くんとは反対に、じわじわと羞恥が芽生えてくる。



A「っ…その言い方やだ…っ。何か、最後までしたみたいじゃん……っ」



今の状況が状況なだけ、


何処かいやらしく聞こえちゃう。




勝「“最後まで”って？」



A「え……？」



勝「何が、最後までなの？」



A「っ」



勝「どこが最後まで？」




わかってるくせに、またもや意地悪してくる。




最初に、“最後までがいい？”って聞いたのは勝利くんじゃん…。





勝「わかんないから聞いてるんだけど？(笑)」



A「っ…わかってるくせにっ！」



逃げるようにそっぽを向けば、


またしても勝利くんに笑われた。




本当に、今日の勝利くんは意地悪だ……。

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