Vict.259 ページ9
健「…じゃあ、“何か”あっても勝利には怒る権利は無いよね」
勝「………」
挑発的な健人くんの言葉に、勝利くんは何も答えない。
健「例えば――キス、とか」
A「っ！そういう事を言うのやめてよ…！」
慌てて健人くんを咎めるも、健人くんは顔色ひとつ変えない。
勝「………」
健「…何？まだAとキスしてないの？」
勝利くんの反応を見て、からかうような健人くんの口ぶり。
勝「っ」
健「あ、図星？」
A「っ…だから！やめてってば…！！」
これ以上、勝利くんの心をかき乱すような事はしたくない――。
勝「…自分が邪魔したくせに…よく言うよ……っ」
苦しげに吐き捨てると、勝利くんはそのまま家を出て行ってしまった。
その場に残された私は、ただ呆然と立ちすくんでいた。
健「…俺が邪魔したって……もしかして、俺が電話した時――お取り込み中だった？」
そう言って遠慮がちに尋ねる健人くん。
A「っ、何で…あんな事言ったの？」
そんな健人くんの言葉をスルーし、真っ先に尋ねた。
健「…ああでも言わなきゃ、勝利の気持ちを確かめられなかったから」
A「何言って…っ」
健「早く、勝利を追いかけなよ。あいつなら絶対、Aを待ってるはずだから」
私の背中をそっと押し、健人くんは柔らかく微笑んだ。
A「健…人くん？」
キョトンとする私に構わず、健人くんはただじっと私を見守っているだけ。
健人くんが何を思って、何を考えているのか…
今の私には到底理解する事は出来なかった。
促されるまま、私は健人くんの家を飛び出す。
まだ、そう遠くは行ってないはず…。
そう思い、アパートの階段を下りた所で、まさかの勝利くんと鉢合わせた。
A「勝…利くん…！？」
勝「…Aちゃん……」
ここで、私を待ってたの…？
A「てっきり…帰っちゃったのかと思った」
予想外の出来事に、未だに頭がついてかない。
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作者名：りん
| 作成日時：2015年10月30日 10時
