Vict.257 ページ7
健人くんのお母さんが帰ると、勝利くんは小さく息を吐いた。
A「勝利くん？」
勝「…何か、緊張した」
健「何で勝利が緊張すんの(笑)」
勝「いや…だって、まさか本当に健人くんのお母さんが帰って来るとは思わなかったし…ドラマみたいだった」
健「ドラマって(笑)…いや、ドラマより壮絶でしょ？」
なんて、冗談っぽく笑う健人くん。
勝「…それに」
言いかけて、勝利くんは顔を曇らせる。
健「あ、もしかして怒ってる？俺がデートを中断させちゃった事」
勝「それもあるけど…とにかく、健人くんには色々と言いたい事がある」
健「え、まさかのお説教タイム？」
そう言いながらも、健人くんは何処か楽しげな様子。
そんな健人くんを横目に、勝利くんは私に視線を向ける。
勝「…やっぱり、Aちゃんはすごいね」
A「え…？」
勝「健人くんが…Aちゃんに依存する理由、わかった気がする」
何処か意味深に、勝利くんは呟いた。
い、依存って…。
A「わ…私はただ、普通の事をしただけだよ…！」
勝「…その“普通”の事が、俺には羨ましく思える」
そう言って勝利くんは寂しげに笑う。
勝利くん…何か、いつもと違う？
A「…ねぇ、勝利くん――」
勝「Aちゃんと健人くんを見てると…俺って何なのかなって思う」
私の言葉を遮り、勝利くんは呟いた。
A「勝、利くん？」
勝「…健人くんが今でもAちゃんを好きなのは十分わかってるつもりだけど――」
切なげな、勝利くんの瞳。
勝「やっぱり、悔しいよ」
力無く笑う勝利くんの顔が、頭から離れない。
勝「俺はAちゃんの“彼氏”なのに、すごくAちゃんが遠く感じる」
A「…っ――」
それは…私と健人くんを見て？
まさか、勝利くんがそんな風に思っていたなんて…。
勝「今回の件は、俺もずっと心配だったし…健人くんの力になりたいって思ってた。だから、健人くんがAちゃんを頼ってしまうのも仕方ないと思う。だけど――」
言いかけて、勝利くんは一瞬躊躇いを見せた。
勝「それ以上に、嫉妬してしまう自分がすごく辛い」
勝利くんのその言葉が、私の心に深く突き刺さる。
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作者名：りん
| 作成日時：2015年10月30日 10時
