Vict.298 ページ48
その時、頭上から声が聞こえた。
菜「何してるの?」
突如現れた菜花の姿を見て、先輩は慌てて唇を離す。
?「菜花…っ」
菜花が、2階から私と先輩を見下ろしてる。
先輩は面食らった顔で、言葉を詰まらせた。
だけど、菜花の後ろに勝利くんの姿が見えた途端、
私の頭の中は真っ白になってしまう。
菜「…今、キスしてたよね?」
菜花の声が、震えてる。
きっと、誤解されてる。
何より、勝利くんに見られてしまった。
A「ち…がうの!先輩が…っ」
?「別に俺が誰とキスしようといつもの事じゃん。菜花もそれを承知で俺と付き合ってるんでしょ?それに、Aちゃんも乗り気だったし」
A「勝手な事言わないで!!」
?「菜花は手を出すなって言ってたけどさ、Aちゃん可愛いし我慢出来なかったんだよね」
何の悪びれた様子も見せず、先輩はただ笑うだけだった。
A「菜花っ…」
とにかく、ちゃんと説明しなきゃ――。
菜「最低だよ」
突き放したような、菜花の言葉。
私の事、軽蔑してる?
全部、先輩に無理矢理された事なのに…。
?「俺の一番は、菜花だから。確かに誘ったのは俺だけど、Aちゃんの誘惑に理性が効かなかったんだ」
A「っ、な!」
“誘惑”って何?
まるで私が誘い出したみたいな言いぐさ…。
菜花は無言のまま、そっと階段を下りた。
私達の前までやって来ると、菜花は何の躊躇いも無く先輩の頬を平手打ちする。
?「っ、何すんだよ!」
菜「それはこっちのセリフ!!あれだけAには手を出さないでって言ったのに…何で……っ」
菜花の視線が私に移る。
私も叩かれる…?
思わず身構えたら、菜花に抱き締められた。
A「な、のか?」
菜「ごめんね…怖い思いさせて…」
A「菜花…っ」
菜「Aは何も悪くない…全部、私が悪いの。私が先輩と付き合ったりしたから」
?「は、お前それどういう意味だよ」
聞き捨てならない菜花の言葉に、先輩は怒ったように問いただす。
菜「どうもこうも無いよ。先輩がAに手を出して目が覚めたの。私は…先輩なんかより、Aが大事。親友を傷付けられて、もうこれ以上黙っていられない」
菜花は冷たい目で、先輩を見つめた。
冷ややかなその眼差しは、菜花にとって決断の時でもあった。
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作者名:りん | 作成日時:2015年10月30日 10時