Vict.297 ページ47
その時、階段下から足音が聞こえた。
きっと、勝利くんが戻って来たんだ。
慌てて勝利くんの名前を呼ぼうとしたら、
その行動を読んだ先輩に口を塞がれた。
？「大声出しちゃダメだよ？せっかく二人っきりの時間を楽しんでるんだから」
吐息が耳にかかって気持ち悪い。
生理的な涙が、頬を伝い流れた。
階段の踊り場からは死角になっていて、階段下に居る勝利くんの姿は見えない。
お願い…勝利くん、気付いて――。
だけど私のそんな願いも虚しく、足音はだんだん遠ざかっていく。
…私、馬鹿だ。
あのまま逃げずに勝利くんが戻って来るのを待っていたら、
きっと勝利くんが助けてくれたはずなのに…。
？「Aちゃんがあの場所から逃げ出してくれたおかげで、ある意味助かったのかもね。あそこで彼氏の事、待ってたんでしょ？」
A「…っ」
？「彼氏、気付かず行っちゃったよ？」
可笑しげに笑う先輩が憎くて、ただただ悔しかった。
？「…その顔、たまんない」
先輩は流れ落ちる私の涙を舌で舐めすくう。
頬に感じる、ぬるりとした感覚。
口を塞がれていて、声を発する事も出来ない。
両手は頭上で固定され、ピクリともしない。
気持ち悪くてたまらないのに、どうする事も出来ない。
男の人の力には敵わないと思い知らされると同時に、
とてつもない絶望感が私の頭の中を駆け巡る。
？「…あ、もしかして苦しい？」
先輩の手がようやく離れたと思いき、そのまま強引にキスをされた。
A「…っ…ん……！！」
やだ…っ、
勝利くん以外の人とキスなんて…。
先輩の舌が、私の唇をこじ開け忍び込んで来る。
A「っ…や」
勝利くんとだって、こんなキスした事無い…。
？「…可愛い。もっといじめたくなる」
唇が離れた瞬間、先輩の目の色が変わった。
途端、先輩の手が体操着の裾から忍び込んで来た。
A「っ…やめて！！」
咄嗟に叫んだ一言に、先輩は一瞬怯んだように見えた。
？「大声出すなって言ったじゃん」
身体をまさぐる先輩の手が背中に回り、いとも簡単に下着のホックを外された。
A「やだ…っ！」
涙が、とめどなく溢れてくる。
これが、私の出来る精一杯の抵抗。
？「…そんなにキスされたいの？」
先輩は小さく舌打ちすると、再び私の唇を塞いだ。
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作者名：りん
| 作成日時：2015年10月30日 10時
