Vict.282 ページ32
？「…俺さ、お前には恨みがあるんだよね」
健「恨み？」
？「そ。俺の元カノがお前に惚れて遊びで抱かれたんだよ」
健「へぇ、誰だろうね？俺、年上のお姉さんとはたくさん遊んできたから」
？「っ！ふざけんなよお前…！人の女に手ぇ出しやがって！！」
健「あのさ、今更何？もう別れてるんでしょ？それに、先輩の“彼女”は、そこにいる菜花ちゃんじゃないの？」
健人くんの言葉に、先輩は何も言い返せないようだった。
聡「俺、もうこれ以上…菜花ちゃんの悲しむ顔なんて見たくない。先輩と一緒に居る事で辛い思いをするなら、いっそのこと俺が――」
菜「…っ…やめて！！」
菜花が、声を張り上げ聡くんの言葉を遮った。
菜「私は…先輩の事が好きなの……。だから、ホントにごめんなさい――」
聡「菜花ちゃん…」
聡くんの傷付いた顔が、頭から離れない。
菜花の事、すごく好きなんだ…。
菜花も、先輩の事がすごく好き――。
聡くんの気持ちは、菜花には伝わらないの？
？「いい加減諦めろよ。菜花がお前のもんになる事は一生ねーから」
先輩の勝ち誇った笑みと、容赦ない言葉。
聡「…じゃあ、女遊びをやめてくれますか？」
？「は？」
聡「俺、先輩が女遊びをやめて菜花ちゃんを大切にしてくれるなら、いつだって菜花ちゃんの事を諦める覚悟でいます」
？「誰が大切にしてないって？菜花はそれを承知で俺と一緒に居るんだよ」
菜「……っ…」
先輩に、女遊びをやめる気は毛頭ない。
こんなに堂々と浮気を認めるなんて、どうかしてる。
菜花はどうして、こんなにも先輩の事が好きなの？
聡「菜花ちゃんはそれでいいの？それが菜花ちゃんの――幸せなの？」
見ていられない程、聡くんの苦しげな表情。
菜「うん……ごめんね」
それ以上、菜花は何も言わなかった。
聡くんが、静かに肩を落とす。
？「ようやくわかった？…ったく、時間取らせやがって。菜花、さっさと行こーぜ」
そう言って先輩は菜花の肩に手を回す。
菜「うん…。じゃあ、A。またね――」
挨拶もそこそこに、菜花は先輩と共にその場を後にした。
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作者名：りん
| 作成日時：2015年10月30日 10時
