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Vict.263 ページ13

A「…強引、っていうか…少し、焦ってる感じだった」




健「だから、それが欲求不満なんだって」




A「っもう、ふざけないでよ…っ」




健「いや、ふざけてないから」




A「今までの勝利くんは…全くそんな事無かったんだよ?デート中の時も、すごく自然な流れだったし…」




ホントに、様子が可笑しくなったのは――





健「…俺が電話をかけてからか」




A「………」




否定出来ないのは、きっとその通りだから。





健「やっぱり、勝利の嫉妬が空回りして、歯止めが効かないんだろうな。本人にその気は無くても、気持ちを止められないんだと思う」




A「っ…私、どうしたらいいのかな」





どうしたら、勝利くんと元通りになれる?





健「勝利からキスしてくる事は、もう無いと思うよ」




A「え…」




きっぱりと言い放った健人くんの言葉に、驚きを隠せない。





健「Aに拒まれた事実と、Aを傷付けてしまうかも知れないという罪悪感から、きっと勝利は前に踏み出せないと思う」




A「そ、れは」





やっぱり、私のせいだから。




このままぎこちない関係のまま…終わってしまうなんて、絶対に嫌だ。





健「Aがさ、勝利を変えてやればいいと思う」




A「え…?」




健「Aが勝利を想う気持ちは事実なんだし、あいつ自身…もう十分わかってる。嫉妬するだけ、Aを愛してるって事だから」




そう言って、健人くんは私にウインクする。





A「いまいちピンと来ないんだけど…」




私が、勝利くんを変える?





健「直ぐにわかるよ」




意味ありげに微笑む健人くんに、謎は深まるばかり。





健「だけど」




言いかけて、健人くんは真剣な顔で私を見た。




健「もし、またAが泣いてるのを見かけたら…その時は全力で奪いにいくから」




A「………」




健「そんな困った顔しないでよ、冗談だって」





ホントに…冗談だよね?





健「このままAを家まで送りたいのが本音だけど、勝利の事を思って今回は諦めるよ」




別れ際、私を見送りながら健人くんは言った。





A「ん、ありがと…」




健「色々あったけど、マジで今日はありがとね。また、学校で」




A「…ちゃんと来てね?」




健「行くよ。もう休む理由なんて無いし」




そんな健人くんを見て、私もホッとした。





勝利くんとも、早く元通りになれたらいいな。

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作者名:りん | 作成日時:2015年10月30日 10時

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