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Vict.261 ページ11

勝「…でも、Aちゃんに優しく出来る自信が無いって言ったのはホント……」




A「え?」





切なげな瞳が、私を捉えた。




そのまま、引き寄せられるように勝利くんに抱き締められる。





勝利くんの腕の中で、思考回路が停止した。





A「勝…」




私の言葉を遮るように、勝利くんは力強く私を抱き締めた。




苦しさに身をよじれば、直ぐに勝利くんの身体は離れた。





解放されてホッとするのも束の間、勝利くんの顔が近付いてくる。





A「…っ」




慌てて目を閉じるも、驚きと不安を隠しきれない。





…いつもの、勝利くんじゃない――。





望んでいた事なのに、どうしても受け入れる事が出来なかった。




気付けば、両手で勝利くんの胸を押し返してた。





勝「…A、ちゃん?」




戸惑いを隠せない、勝利くんの表情。





A「ごめん…なさい。何か、いつもの勝利くんじゃないから…」




勝「………」





勝利くん、すごく傷付いた顔してる。





でも…やっぱり――




こんなモヤモヤした気持ちのまま、



キス、なんて出来ないよ……。





勝「…健人くんは良くて……俺はダメなの?」




ぼそりと呟いた、勝利くんの言葉。





A「え…?」




勝「ごめん。やっぱり、先に帰る。このままじゃ、またAちゃんを傷付けてしまうから。ちゃんと…気持ちの整理、したい」




そう告げて、勝利くんは歩き出してしまう。





優しく出来る自信が無いって言ったのは、こういう事?





“…健人くんは良くて……俺はダメなの?”





それが、勝利くんの本音?




ずっと、気にして…?





A「…っ」




あぁ、やっぱり全部…私のせいなんだ。




勝利くんだけじゃない。




私だって、十分勝利くんを傷付けてる。





ポタリ…と、堪えていた涙がアスファルトに落ちた。




今度は、その背中を追いかける事は出来ない。




勝利くんも、きっと私が泣いてる事に気付いてる。





だけど…お互いにどうする事も出来ない。





去って行く勝利くんの後ろ姿は、



心まで遠ざかっていくようで…




更に涙が溢れた――。

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作者名:りん | 作成日時:2015年10月30日 10時

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