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Vict.251 ページ1

健「…どうして俺が、学校では平気な顔で居られたかわかる?」




A「………」





健「Aが居たからだよ」




呆れたように笑う健人くん。





健「…ホントは学校なんて行きたくなかったし、学校に行ける余裕なんて無かった。俺はそこまで強くない――だけど」




A「っ」




健人くんの伝えたい言葉がわかった今、どうする事も出来ない…。





健「Aに会いたかったから――…。ただそれだけで、俺は救われたんだ」




A「健…人くん……っ」




健「でも今じゃもう、Aを抱き締める事すら出来ない…。触れる事すら、許されない」





勝「………」




何も言わない勝利くんを見て、健人くんは寂しげに笑う。





健「“チャンス”なんて、無いのはわかってる。だけどもし、母さんが帰って来た時…俺は俺を守りきれるかわからない」




そっと私に視線を向ける健人くんに、これ以上無いやるせなさを感じる。





健「“自信”が、無いんだ…。母さんに愛されてる自信が――」




A「何言って…っ」




健「だって、俺を置いて出てったんだよ?捨てられたも同然だよ」




吐き捨てるような健人くんの言葉に、返す言葉が見つからない。





だってもし、それが事実なら、




健人くんは――…。






その時、ガチャリと玄関の扉が開いた。




その場の空気が、一瞬にして変わる。




見覚えのある、綺麗な女の人…。





紛れもなく、健人くんの“お母さん”だった。






健母「…健人…」




初めて聞いた、健人くんのお母さんの声。





健「――母さん、指輪を取りに来たんでしょ?」




意外にも、健人くんは落ち着いていた。





健母「…えぇ」




健「…指輪、大事な物なんでしょ?忘れちゃダメじゃん」




そう言って健人くんは、手にしていた指輪をお母さんに差し出した。





健母「ありがとう――」






健「…あのさ、ひとつだけ俺の質問に答えて?――何で俺を“捨てた”の?」





唐突な健人くんの質問に、



健人くんのお母さんは表情ひとつ変えない。

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作者名:りん | 作成日時:2015年10月30日 10時

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