Vict.109 ページ9
マ「…でも勝利くん、Aちゃんがマネージャーやるって言った時、すごく嬉しそうだったよ」
A「それは…っ」
内田くんに私を誘うよう、頼まれたからだよ。
勝利くんにとって、マネージャーなんてどうでもいいんだ。
誰がマネージャーになったって、勝利くんには関係の無い事…。
この気持ちが勝利くんに届く事なんて――。
マ「ダメ」
マリくんの言葉と同時に、髪に何かが挿さった。
A「…え？」
マ「Aちゃん、何か良くない事を考えてたでしょ？――だからストップ」
A「…何をしたの…？」
そっと髪に触れると、何かが手の平に当たった。
マ「僕が取ったげる」
着けたのはマリくんなのに、あたかも自分じゃないような言い方。
A「それって…」
マリくんが手にしていたのは、先程パンケーキ屋さんのテーブルにあった一輪の花だった。
マ「可愛いでしょ？造花だから枯れないし、しっかりしてるからかんざしにもなるよ」
得意気に話すマリくんを見て、思わず目を丸くする。
ていうか――
A「それ、勝手に持って帰っちゃっていいの？」
マ「うん、大丈夫だよ。お会計の時、レジの女の子にちゃんと許可をもらったから」
A「………」
いつの間にそんな事聞いてたんだろう。
マ「だからそれ、Aちゃんにあげる！今日のデートの記念に持って帰って？」
A「あ、りがとう…」
デートじゃないけど、これは素直に嬉しいかも。
マリくんって意外と、こういう些細な事に気が付くんだね。
さりげない気配りや気遣いが、女心をぐっと掴まれる。
“意外と”は余計だったかな？
マ「だからあんまり、ネガティブになっちゃダメだよ」
A「マリくん…」
私がネガティブになってた事、わかってた？
マリくんは私を止めようとしてくれたの？
マリくん…ちゃんと考えてるんだ。
それなのに私は、一人で勝手に全てを投げ出しそうになって馬鹿みたい。
いつだってマリくんは、私の事を考えてくれてた。
健人くんの時だってそう。
マリくんは、誰よりも私の事を心配してくれていた。
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作者名：りん
| 作成日時：2014年7月29日 15時
