Vict.106 ページ6
マ「…勝利…くん？嘘、でしょ？」
マリくんは相当ショックを受けた顔をしていた。
今にも泣き出してしまいそうだ。
それにつられて、私も涙が溢れそうになる。
だけど、必死で堪えた。
A「…ごめんね、私のせいで！今、店に来たとこだよね？ゆっくり楽しんでって！――それじゃあ私達、帰るね……！行こう、マリくん」
部員達にそう告げ、立ち上がる。
勝利くんの顔を見る事なんて出来なかった。
マ「うん……っ」
マリくんのおかげで、我に返る事が出来た。
もちろん、こんな事、心にも思ってない。
私は何にも悪くない。
鞄の中から財布を取ろうとしたら、マリくんに止められた。
マ「僕に払わせて？」
マリくんは手早く二人分の料金を払い、立ち尽くす私の手を引いて店を出た。
ずいぶんと時間が経ったように思えたが、外はまだ明るかった。
A「…お金、後で返すね」
マリくんは何も答えない。
私達は、ただひたすら歩き続けた。
このまま帰るには、まだ時間は早い。
A「マリくん…どこまで行くの？」
さっきの出来事なんて、思い出したくもなかった。
寧ろ、本当に忘れてしまいたい。
マ「…だ…よ」
A「え？」
マ「あんな勝利くん……やだよ」
A「………」
マ「あんなの、勝利くんじゃない」
A「マ、リくん」
私だって、信じたくないよ。
マ「…ごめんね、僕がAちゃんを連れ出さなかったらこんな事にはならなかったのに――」
A「マリくんのせいじゃないよ」
マ「僕のせいだよ。僕がパンケーキ食べに行こうなんて言わなかったら、皆と遭遇する事も無かったんだよ」
A「でも、悪いのはマリくんじゃない。悪いのは――…」
山下さん……。
どうしてこんな事をしたの？
私をのけ者にして、皆の気を引いて点数を稼ぎたかった？
そこまでして、マネージャーになりたかった？
そんな事より、皆に信じてもらえなかった事が辛い。
勝利くんに信じてもらえなかった事が、何より悲しかった。
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作者名：りん
| 作成日時：2014年7月29日 15時
