Vict.147 ページ47
健人くんがどんな思いで私にキスしたのかわかるからこそ、胸が痛い…。
キスされた事も含めて、全てが苦しい。
明日、どんな顔して勝利くんに会えばいい？
もう、勝利くんは私の気持ちを知っている。
想いだって、通じ合ったのに…。
たとえ付き合ってなくとも、
好きな人以外とキスしたなんて勝利くんが知ったら――
嫌われてしまうかも知れない。
考えただけで、胸が張り裂けそう。
それに、健人くんのお母さんの事だって、
このまま終わらせる訳にはいかない。
健人くんも心の底では、お母さんに帰って来て欲しいと願ってる。
“もういい”なんて、
そんな事……絶対に言わせない。
その時、誰かが部屋の扉をノックした。
母「――A？」
そっと扉を開け、お母さんが顔を覗かせた。
母「…健人くん、夕食いらないって。一人で帰ってったけど……何かあったの？」
心配そうな顔で、私に問い掛けてくる。
A「…何にもないよ」
キス、された……なんて言えるわけない。
母「そう…。ご飯出来たから、下りてらっしゃい」
それ以上深入りはせず、お母さんは静かに扉を閉めた。
――ハンガーにかけられた健人くんの服が、
ふと私の視界に入る。
A「健人くん……服持って帰るの忘れてる」
明日…返さないと――。
カーテンの隙間を覗くと、いつの間にか雨は止んでいた。
だけど、この時私はまだ知らなかった。
健人くんが私にキスした、“本当の目的”を。
翌朝――
健人くんは、一日ぶりに学校へ来た。
風「…やっぱ仮病だったんだな(笑)」
少しホッとした様子で、風磨くんが言った。
風磨くんも、本当は健人くんの事が心配だったんだと思う。
健「うん、お察しの通り母親が帰って来たから休んじゃった(笑)」
何事も無いように健人くんは笑う。
…ここまでくると、
さすがの私も健人くんの“作り笑い”にも見分けがつく。
だけどまずは、健人くんにちゃんと話さないと…。
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作者名：りん
| 作成日時：2014年7月29日 15時
