Vict.138 ページ38
良「ごめん…らしくないよね、俺。自分でもわかってる」
そう言って内田くんは、私の用意したドリンクを一気に飲み干した。
…何か、あったのかな？
良「山梨さんと勝利、何かいつもと違うからさ。何処か晴れやかというか…昨日の山梨さんからは想像もつかないんだよね――」
探るような目で、内田くんは私を見つめる。
内田くん――すごく鋭い。
思わず、息を呑みそうになる。
良「…だから、勝利に聞いちゃったよ。“山梨さんと付き合ってるの？”って」
A「………」
良「そしたら勝利、そっけなく“付き合ってない”って言ってどっか行っちゃった(笑)」
内田くんは可笑しげに笑う。
良「あいつが山梨さんを好きなのは、もうとっくにバレてるのに…未だ俺に話そうとしないんだよ(笑)」
A「内田くん…」
良「まだ俺に後ろめたい気持ちがあるんだろうな。そんなの全然気にしなくていいのに」
勝利くんの事、全部わかってるんだ。
友達の事をそんな風に思いやれるなんて、簡単には出来ないよ。
内田くんだって、辛いはずなのに――。
良「…勝利が“付き合ってない”って言ったのは、色々と深い理由があるのかなって。だから俺は――」
内田くんが言いかけた時だった。
勝「Aちゃんっ」
勝利くんが、少し焦ったような面持ちで話し掛けてきた。
勝利くんの内田くんを見る目が複雑そうに見えるのは気のせい――？
A「勝利くん…」
二人で話してるの、誤解…されちゃったかな。
勝「…えっと、その――」
勝利くん、言葉に困っているみたい。
やっぱり、私と内田くんが二人で話してたから慌てて話し掛けてきたの？
もしそうだったら……
すごく嬉しい。
勝手な妄想が、頭を膨らませていく。
こんな事、勝利くんに知られたら引かれるかも知れない。
勝「今日さ、一緒に――」
A「え…？」
良「ちょうど良かった」
勝利くんの言葉は、内田くんによって遮られた。
勝利くん、何を言おうとしてたの…？
良「俺、勝利に話したい事があったんだ。部活終わったらさ、ちょっと付き合ってくれない？」
勝「………」
黙り込む勝利くんを横目に、内田くんは返答を待った。
勝「――わかった」
ようやく勝利くんが承知すると、内田くんは満足げに微笑んだ。
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作者名：りん
| 作成日時：2014年7月29日 15時
