Vict.132 ページ32
勝「俺、陸上部だったんだ。走るのが好きで、わりと得意な方だった。…そこで出会ったのが、当時付き合ってた彼女なんだ」
勝利くんの“元カノ”の存在に、少しだけ胸が痛む。
わかってた事なのに、いざ勝利くんの口から聞くと、やっぱり心苦しい。
…私って勝手なのかな。
こんなに、自分が弱いとは思わなかった。
勝「…明るくて、活発で、誰とでも仲良くなれる子だった」
――まるで…私とは正反対。
私はそんなに明るくも活発でも無いし、
誰とでも仲良くなれる訳じゃない。
勝「だんだん彼女に惹かれて、気付けばいつも気になってた。…これが“恋”なんだって気付いた時、彼女に告白された」
それって――
私の時と同じみたい……。
勝「向こうも俺の事が好きだったんだって、すごい嬉しかった。…だけど――」
勝利くんの表情が、曇っていく。
勝「付き合って暫くして、彼女はだんだん俺にスキンシップを求めるようになった」
A「スキンシップ？」
勝「…彼女が学校や人前で抱き着いてくるのは当たり前の事だった。だけど、人前でキスを求めてきたり、見せつけたがるようになった時は――正直、戸惑った」
風「俺は嬉しいけどな(笑)」
風磨くんが空気を読まずに言葉を挟むと、
勝利くんは苦々しく微笑む。
勝「…俺も風磨くんみたいにそう思えたらいいけど。……別に嫌とかそういうんじゃないよ。彼女の事、すごく好きだったし……。でも俺は――側に居られるだけで幸せだったんだ」
一緒に帰ったり、
休日にはデートして…二人で楽しく過ごす。
側に居るだけで感じる、幸せな気持ち。
勝利くんの言いたい事……わかるよ。
私もきっと、勝利くんと同じ。
勝利くんが側に居てくれるだけで、幸せだもん。
風「お前、それ健全な中学生が思う事じゃねーぞ(笑)」
風磨くんが茶々を入れるが、勝利くんは何も答えない。
勝「…気付いたら、人前じゃない所でもキスを拒んでた。彼女の事、好きなのに――。自分でも、何でかわからないんだ……」
A「勝利くん…」
勝「……知らず知らずに、彼女の事……傷付けてたかも知れない。――そのうち彼女は、俺に何も求めて来なくなった」
A「え…？」
勝利くんの瞳が、悲しげに揺れている。
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作者名：りん
| 作成日時：2014年7月29日 15時
