Vict.125 ページ25
体育館に戻ると、部員達が後片付けをしていた。
あれから一度も体育館に戻らなかった私を、
皆は怒っているかも知れない。
A「…あれ」
勝利くんが倒れ込んだ場所に掛けておいたタオルが無い。
それに…床が綺麗に掃除されてる。
一体誰が……？
良「皆で、片付けといた」
背後から内田くんが声を掛けてきた。
A「内田くん…」
良「山梨さんのタオルは洗って外に干してるから」
A「…ありがとう」
そこまでしてくれたんだ…。
そう言えば、勝利くんにハンカチ渡したままだ。
良「あのあと、俺達皆反省したんだ」
A「…え？」
良「誰も、山梨さんみたいに出来なかったから。ただ呆然と見ていた俺達に対し、山梨さんだけは真っ先に勝利を助けようと動いた。情けないよね、仲間が苦しんでるのに見ているだけなんて」
A「内田くん…」
？「山梨さんっ」
その時、後片付けを終えた部員達が次々に私達の元へとやって来た。
？「…ごめん。俺達、誤解してた。山梨さん本当は……“親睦会”には誘われてなかったんでしょ？」
A「えっ…」
？「山梨さんが勝利を助けようとした時、気付いたんだ。山梨さんは嘘なんかつくような子じゃない、ホントは…山下さんが嘘をついてたんじゃないかって」
A「………」
？「…俺達皆、勝利に何もしてやれなかった」
皆…私の事、信じてくれるの？
山下さんじゃなくて、私を？
？「今思えば…山下さんは勝利に気があるみたいだったから、山梨さんに勝利をとられたくなかったのかもな」
？「勝利は山下さんの事どう思ってんだろ？」
その言葉に、一瞬だけ心臓がドキリと跳ねた。
そんな私の様子を見て、内田くんが囁いてきた。
良「…で、勝利とはうまくいったの？俺はてっきりそうだと思ったけど」
A「っ、誤解は解けたよ…。だけどっ、今までと何にも変わらないよ…？」
思い出しただけで、また涙が溢れそうになる。
良「…何があったの？」
泣き出しそうな私を見て、内田くんが真っ先に問い掛けてきた。
だけど、答える事は出来なくて、そっと首を横に振る。
言えない……言いたくない。
？「あれ？そういや、山下さんは？」
一人の部員が辺りを見回す。
私が体育館に戻って来た時から、山下さんの姿が見えない。
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作者名：りん
| 作成日時：2014年7月29日 15時
