祈り (ページ42)

今日:28 hit、昨日:57 hit、合計:100,001 hit

▽ ページ42

最近何かと悩んでしまっていた。
第一はやっぱり出産のこと。

ある日赤ちゃんの胎動が強くて寝れない日があって、治まるまでの少しの間だけ勉強になればと開いたある動画。

「えっ...嘘でしょ。」

それはごく普通の出産の動画だった。
だけど陣痛の時から産まれるまで俺の想像以上にママが苦しんでいた。

「そんな痛いの...？」

いや、痛いのなんて分かってたはず。
番組とかでも何回か見てきた。
その時は「あぁ、大変だな。」としか思わなかった。
でもいざ自分がとなると訳が違う。

「ははっ、ちょっとママ怖いなぁ...」

痛いのは得意じゃない。
痛みを経験するのも大事だとは言ったものの、帝王切開にすれば良かったかも、なんてちょっと後悔してる自分もいた。

「はぁ...弱いママだね、俺は。」

そして俺を悩ます第二の種はお金。
妊娠してスパッと仕事から離れた俺はもちろん収入なんてあるはずもなく、バイトも出来るわけなくて貯金を切り崩す生活だった。

「情けねぇ...」

何より一番お金を使っているのが俺の変装なことが情けなくて仕方なかった。

自分の子供より自分優先だなんて。

このままだとこの子に満足な生活を送らせてやれない。
ミルクだって俺は出ないから買わなきゃいけないし、オムツだっている。

それに将来的にはこの子に義足だって買ってあげなきゃいけない。
でも正直そんな余裕なんて微塵も無かった。

「どうしよう...」

さらに病院代でお金は飛んでいく。
俺が大事にしていたアクセサリーなどは全部売った。
それでも足らず、しまいには銀行にお金を借りるしか無かった。

このままで本当にママになれれるのか？

自問自答しても自信を持ってYESとは答えられなかった。

「ママどうしたらいい？」

するといつもより弱い胎動が返ってきた。

「そうだよな。お前に聞いても分かんないよな。」

こういう時に限ってジェシーもテレビとかラジオで何にも言ってくれないし。
何か本当に孤独を感じてしまっている。

「あぁぁー！もう！」

次はむしゃくしゃして大声をあげてしまった。
俺の感情も忙しないな。

「どうにかなるよ、多分。」

そう。
神様は越えられない壁は与えないんだから。

こうやって自分で自分を奮い立たすしか今の俺は出来なかった。