祈り (ページ5)

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家に着くと病院で貰ったナプキンを付けることにした。

「痛ってぇ！何だこれ！」

男兄弟ということでこういうことには触れてこなかったし、何より病院での説明を真剣に聞いてなかったせいで変な付け方をしてしまった。

「はぁ…何だよ…」

色々なことが短時間で起きすぎて正直脳が理解しきれてない。

もし本当に俺の体に子宮があったらどうする？
メンバーには何て言うんだよ。

「こんなこと言えねぇよ…」

メンバーを信用していない訳では無い。
このことを言ってアイツらを困らせたくない。
これは自分だけで解決しなければいけない問題だと自分に必死に言い聞かせた。

そうとなれば早く本当の自分の体を知らなければすぐにバレてしまう。
直近のオフは２日後。
この日に病院に行くしかない。

「ってことは…」

あと２日で野口悠へ変身するための準備をしなければいけないということ。

「まぁ、スカート履いとけば…」

俺は単純な考えでワンピースやヒールなど必要なものを即日発送で頼んだ。
可愛いとかはそういうのはフル無視でとにかく早く届くもの。

一応ウィッグは女性らしくロングにしたけど。

「あ、メイク！」

俺のあまり得意ではないメイク。
ライブでメイクはするけど、きょもとか北斗みたいにアイラインは引かないしアイシャドウやチークなんて以ての外。
リップも薬用だけだし。
とりあえず動画見たコスメを一通り買ってはみた。

やっと一通りの作業を終えた頃にはマネージャーが迎えに来る２時間前だった。
別に寝てもよかったが、何となく徹夜でもいいやと思ってソファーでボーッとしていた。

「六花病院…」

先生から貰った名刺を改めて見ていた。
グループを組んでからやたら「６」という数字に敏感になった。
これも偶然なのか必然なのか。

「てか、先生も田中じゃん。」

苗字ランキングでは４位のこの苗字。
でもこんなに間近にいたのは何気に初めてかもしれない。

やっぱりこれは俺にとって運命なのかもしれない。