祈り (ページ32)

今日:23 hit、昨日:57 hit、合計:99,996 hit

▼ ページ32

Js side

「ねぇ、何これ。」

しばらくの沈黙を破った大我の声。
何が起こっているのか分からなかった。
みんなの顔を見ても納得いってないことがよく分かる。

「こんなのズルいよ...」

さっきとは違う慎太郎の小さな声がこの何もない部屋に響いた。

「どうするの。」

次は大我の声。
大きい声じゃないくせにこうして部屋中に響くという事実がすごく悲しかった。

「どうするのって言っても何も手がかりないよ。」

「じゃあこれが樹の本心だと思ってんの！？涙で便箋ぐしゃぐしゃにしてさ、文字も震えてる。こんなのが樹の本心だと思ってのかよ！」

大我が見せつけるように俺の目の前に便箋を差し出した。
確かに便箋は樹の涙のせいなのかボコボコになり、ボールペンで書かれた震えが分かるいつもより弱々しい字。

「思ってないよ。」

「なら、樹の守りたいものって何だよ。ここまでして守りたいものは何なんだよ！」

こんなに大我がひどく感情的になることはなかった。
初めて見る姿に他のみんなもびっくりしていた。

そんな中でも分かることはただ一つ。

「多分、俺たちだよ。」

「はぁ？」

「本当に守るべきものはあるんだと思う。でもその中にちょっとは俺らのこともあると思うんだよ。樹は自分を犠牲にして色々なものと戦ってる。」

「じゃあ樹はこのままにするの？」

「それはないよ。樹は探す。俺たちも戦わなきゃ。樹一人だけが戦うっていうことは間違ってる。」

それから事務所の人達にしっかり事情を説明し、樹は体調不良による無期限の活動休止ということになった。

樹は絶対グループに必要だよ。
帰ってきてもらわなきゃ困る。

樹がいない人生なんて無理だよ。