祈り (ページ26)

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退院当日はメンバーが迎えに来てくれていた。

「樹、おかえり。よく頑張ったね。」

退院が決まった時、みんなにグループメールで報告するとすぐに電話がかかってきてバカみたいに喜んでくれた。

「何も全員で迎えに来ることないだろ。」

「何だよ。本当は嬉しいくせに、カッコつけちゃって。素直になれよ。」

そう言いながら俺の腕に巻きついてきた高地。
普段は自分からこうしてくることは少ないのに、やっぱりあざとい。

「高地、一回離れた方がいいよ。ほら、見てみ。」

いきなりきょもがそんなことを言い出すので、きょもの目線の先を辿ると明らかにこちらを睨んでいるジェシーがいた。

「ジェシー、怖いから！」

何も言わずに約１ヶ月待ってくれていたみんな。
絶対それぞれに思っていた事はあったはず。
でもそれを口にせずにこうやって迎えに来てくれた。

その小さなことが俺にとっては大きくて、すごく幸せだった。

「樹、おかえり。」

「ん、ただいま。」

でも俺はこれからもこの大好きな奴らに嘘をつき続けることになる。
なら、いっそのこと消えてしまえばいい。
もしかしたら、今がその時なのかもしれない。

メンバーのためにも自分自身のためにも。

グループにまだいたくて頑張った治療なのに、結局はこうなっちゃうなんて。
でもこれは５人が大好きだからこその行動だ。

そう思わなくちゃ。

でもやっぱり俺はビビりだった。
自分が決めたことなのに未練がましく、まだみんなに依存していたのだ。

「きょも、飯行こう。」

「北斗、今度服買いに行こうぜ。」

「慎太郎、俺ここ気になんだけど。」

「高地、次いつ空いてる？」

悪阻が治まり体調が戻ってきたこともあって、毎日誰かしらと過ごした。
少し怪しまれていそうだが、そこは気づかないふり。

でも俺がやっぱり依存していたのはあの人だった。