祈り (ページ3)

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病院に着くと意外と多くの人がいた。
泣いてる子をあやすお母さん。
車椅子に乗ったおばあさんと付き添いの男性。
そんな中、おひとりの俺。
どこか居心地が悪く、スマホに集中させていた。

男性出血腹痛
腹痛血がん

診察室に呼ばれるまでひたすらこのキーワードをスマホに打ち込んだ。
安心出来る言葉なんて一つも無かった。

「うっ…ヤバっ…」

どんどん痛み出すお腹と血の出る感覚が余計に俺を焦らせ気持ち悪くなった。

「うﾞっ…ゲホッ…ぅえっ…！」

死ぬ前に何しようか。

トイレに駆け込み便器を抱えながらもまだそんなことを考えていた。
このままここにいても無駄だ。
それにもう診察室に呼ばれそうだ。

込み上げてくるものをグッと堪えトイレから出た。

「田中さん、どうぞ。」

ちょうどタイミングも良く、流れるように診察室へ呼ばれた。
診察室には俺と同い年ぐらいの優しそうな男の先生がいた。

「こんばんは。」

先生は見かけだけではなく声まで優しかった。
まるで俺を安心させてくれるような。
でもどこかジェシーとは違う。
その声を聞くと俺は溜めてたものが爆発した。

「先生っ…！俺死にたくないっ…死にたくないよ！」

何も状況が掴めていない先生は困っていたが優しく手を取ってくれた。

「まだ死ぬなんて決まってないです。ちゃんと検査しましょう。」

「でも俺っ…いっぱい血出てんの！どうしよっ…」

「怖いですね。頑張ってここまで来てくれてありがとうございます。もう大丈夫ですから。ちゃんと見ていきましょう。」

「はい…」

正直今の俺は何も考えることは出来なかった。
しかし先生の声だけは耳に入った。
看護師さんの声はよく分からない。
まるでこの世界に先生の声しかないような感覚だった。