祈り (ページ13)

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hk side

「んー…北斗ぉ…」

「お？起きた？」

「北斗ぉ…ねぇ北斗？次どこのお店なの？」

「ハシゴしてる訳じゃないよ？覚えてない？樹の家行ってるよ。」

「えぇー？樹ー？」

「そう、樹。」

「樹に会いにいくのー？」

やばい。
完全に酔っ払ってる。
こんな風になるまではなかったからちょっと扱いにくい。

「樹のとこ行ってちゃんと話してくるんだよ。」

「…やーだー！」

「ジェシー？」

いきなり駄々をこねだしたジェシー。
酔っ払ってるとは言え大男が暴れると宥めることが難しい。
タクシーめっちゃ揺れてるし。

「樹のとこは行かない！」

「どうして？」

「絶対会ってくれないよ！無理だってっ…」

「じゃあジェシーはこのままでいいの？」

「良くない！良くないけど…」

「なら、ちゃんと二人で話してきな？ぜーったい大丈夫だから。」

「うーん…分かったぁ…」

やっと納得してくれ、ホッとしたのも束の間。
トントンと肩をつつかれた。

「うん？どうした？」

「吐いちゃうかも。」

「そっか…はぁ！？今！？」

「うんっ…やばいっ…」

「嘘でしょ！ちょ、ちょっと！すみません！ここで大丈夫です！あ、お釣りもいいんで！」

俺は財布からすぐ取り出せた五千円札を運転手さんに渡しタクシーをを出た。

ドラマならカッコよくなるんだろうけど、現実では吐く寸前の酔っぱらいを抱えながら、あったはずのお釣りを少し後悔していた。

「はぁ…3000円が…」

あまり距離を行ってなかったはずなので少なからず3000円のお釣りはあった。
ちょっともったいないなぁ、なんちゃって思いながら近くの公園にある公衆トイレへ向かった。

「ほら、ジェシー？ここ出しちゃいな？」

背中をさすってあげるとかなりの勢いで戻すジェシー。

「だからしんどくなっちゃうって言ったのに…」

しばらく戻し続けて何とか治まったようで本人はスッキリ出来てまた寝そうになって俺に全体重をかけてきてる。

「お兄さん？スッキリ出来て良かったけど重たいんだ。歩ける？」

「んー？無理ー。」

更に俺に己の体を巻き付けてきたジェシー。
傍から見ればすごいぞ、これ。

「あー、分かったから。樹の家早く行こう。」

このままじゃ俺が持たない。