祈り (ページ12)

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hk side

周りから見ても最近の樹とジェシーの様子はおかしかった。
恐らく樹に原因があるんだろうけど、樹が楽屋で爆発してしまってからは更に関係が悪くなったように思う。

「ジェシー、今日ご飯行こうよ。」

「北斗から誘ってくれるなんて珍しいね。どうしたの？」

「まぁ、ちょっとね。」

樹もだけどとりあえずジェシーの話を聞いてあげなければ。

そう思って誘ってはみたものの、どう話を切り出すのが正解か分からず意味の無い話がずっと続くばかりだった。

でもその間、いつもよりジェシーのお酒を飲むスピードが早かった。

「ジェシー、そんな勢いよく飲んで大丈夫？お酒しか飲んでないよ？」

「大丈夫。お酒飲みたい気分なの。で、北斗何か相談あるんじゃないの？吐き出さなきゃしんどくなるよ？」

いや、こっちの台詞だわ。

「ジェシーは？溜めてんじゃないの？」

「違うっ…違うよ！樹だよ！樹が溜めちゃってんの！なのに、何も言ってくれない。」

そう吐き捨てるとジョッキの半分の量のビールを一気に飲み干し、新しいお酒を注文した。

「ちょっとジェシー。やめときな。しんどくなるよ」

実際目の前には沢山の空いたジョッキがあった。
まだ来て一時間ちょっとしか経ってない。

「いいでしょ！樹の方がしんどそうだよっ…ずっと苦しそうっ…」

そう言って泣き出してしまったジェシー。
この人はいつもそう。
人の痛みを自分の事のように一緒に痛がってくれる。

それは樹だから、ではなく彼の周りにいる人全員に対してそう。
だからこそジェシーの痛みを和らげてあげないと、ふとした時に消えそうで怖くなる。

「樹には聞いた？」

「聞くも何も近寄ってくんない。もう３ヶ月もだよ？手も繋いでないしハグもしてない。」

「３ヶ月！？」

申し訳ないけど想像以上だった。
恋人としてそれは結構辛いだろう。
部外者の俺に出来ることはただ一つ。

「よし、樹の家行こうか。」

「何言ってんの？無理だよ。」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。行くよ。」

既にべろべろのジェシーがちゃんと話し合えるかは別としてとにかく無理にでも二人きりの空間を作らなきゃ。
会計している間に寝てしまった大男を抱え店から出るとタクシーを拾い樹の家に向かった。