祈り (ページ2)

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「はっ…？」

俺は今、とんでもない光景を目の当たりにしている。

遡ること30分。
いつものようにゲームに没頭していた時のことだった。
やけに下腹部がズキズキと痛みだした。

すぐに治まるだろうと出来るだけ気にしないようにしていたが一向に治まる気配は無く、痛みに加えて吐き気や腰の痛みまで出てきた。

「うぅっ…はぁっ…」

一旦ゲームをセーブし、どうにか痛みが緩和される体勢を探すため体を動かしているとドロっと何かが下から漏れ出る感覚がした。

今まで感じたことのない感覚に焦った俺は、本能なのか何か分からないがトイレに駆け込んだ。

「えっ…？何だよ、これ…」

下着を下ろすとそこには血がべっとりと付いていた。
この見た事のない光景に俺は思考が停止し、今に至る。

とりあえずトイレに持ち込んでいたスマホで当てはまる症状を検索にかけると、腸炎や痔など様々な病名が出てくる中で一際目についた単語。

「がん…」

嘘でしょ？
俺死ぬの？

そう思い始めれば、一気に襲いかかる恐怖感。
たかが血、されど血。
こんな非日常的なことが起こっているのだ。

しかしいくつかこの病気に当てはまる部分がある。
最近、吐き気もあって貧血っぽかったし、何かお腹が張ってるなって感覚だった。
メンバーからも心配されていたほど。

「ジェシー…」

ジェシーとは付き合ってもう３年。
どんな時もどんな俺でも全力で受け止めてくれる大好きな人。
そんなジェシーの声を求めて電話した。

「んっ…もしもし。」

電話の向こうからは完全にこの電話で起きたであろうジェシーのちょっと掠れた声がした。
そんな声でも今の俺にとっては最適な安定剤だった。

「ごめん、起こした。」

「ううん、ちょうど水飲もうと思って起きたとこ。」

この人は自分に関する嘘は下手くそなのに、人のためにつく嘘は上手な人。

「どうした？」

「もしさ、俺がいなくなったらどうする？」

「どうするも何も俺がそうなる前に死んでも守るよ。」

「ジェシーが死んじゃ意味無いよ。」

「樹、不安なら今から行くよ？」

「いや、大丈夫。もう寝るから。」

「そっか。暖かくして寝るんだよ。」

「うん。おやすみ。」

ジェシーとの電話を切るとすぐに夜間救急へ飛び込んだ。