【銀魂】沖田隊長、好きって何ですか？【沖田総悟】

馴れ馴れしい　沖田side ページ31

「…なんで今アイツが出てくるんですかィ」


…と、口に入れたみたらしをそしゃくし終え、飲み込んだ所で俺の団子にしれっと手を伸ばしてくる旦那の手を叩き落としながら俺はそう返した。バシンと派手な音をたて、「いて」なんて声を漏らした旦那は、叩かれた箇所を擦りながらに「沖田くんはいつだってAチャンのことで頭いっぱいなクセに」と笑ってくる。ニヤリと歪まれた口元は、完全に俺をからかいに来ている。

…つか、さっきアイツのことを考えないようにしようと決めたばかりなのに、どうしてこうもこの人は人の嫌なところを突いてくるのだろうか。なんとも陰湿な人である。


「…その『チャン』って言うのやめて貰えやせんか」


…というより、旦那はなんだってAにこんなにも馴れ馴れしいのだろうか。その名前を旦那がヘラヘラと口にすることに若干の苛立ちを感じてしまう。Aの口から旦那の話題なんて出たことはないのに。そんなことを思いながら横目に旦那を見据えると、「ん？」と首をコテン、とかしげて。


「…なんでそんなに馴れ馴れしいのかってか？」

「…」


…本当に嫌になる。俺自身、他人の痛いところを突いてイジるのが大好物の正真正銘Sだが、それと同時に他人にこうしてイジられるのが死ぬほど嫌いなのだ。Sというのはそういうものなのである。自分がやるのは良くて自分がやられるのは嫌。酷く自分勝手な生き物だ。自然と眉が寄っていくのを見てか、旦那は「掛かった掛かった」とでも言いたげに得意気な笑みをこちらに寄越した。


「なんでだと思う？」

「…別に」


んなこと思ってねェですけど、と。俺は特に表情を変えることなくそう返した。視線を窓の外に向けては、行き交う街の人々を眺める。行き急ぐようにそれぞれ歩いていく様を見ていれば、窓ガラスに映った旦那は俺の顔をヒョコリと覗き込み、つまらなそうな顔をしている。そしてガラスの中の旦那は言う。「思ってない顔じゃないと思うんだけどなァ〜？」と。そろそろその甘ったるい息を吐き散らかす口を閉じて頂きたいものだ。


「そうそう。あんまさ、Aのこと困らせんなよ」

「名前で呼ぶのやめてくだせェ」

「え、じゃあ俺アイツのことなんて呼べばいいの」


嫉妬する野郎は怖くていけないねェ、と。俺を完璧に挑発する旦那に今にも舌打ちが溢れそうになるのをなんとか堪えて、遠慮のない溜め息をひとつまたついた。


「つか今日沖田くんノリ悪くね？」

「…んなことねェです。いつもこんなもんで……」


「想い人の女のコとうまくいってないの？」

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