墓黙り【2j3j】 (ページ7)

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責任とってね♡【knmc】ページ7

剣持刀也は、Aのことが大層好きであった。

彼女はいつでもかあいくニコニコと笑っていて、物腰が穏やかで、とっても綺麗なおんなのこだった。

「とぅやくん、」
とチョッピリ舌足らずに刀也の名前を呼んでふんわり笑って、その笑い方はこっくりと甘い砂糖菓子の味を刀也の舌へ呼び起こした。

間違いなく刀也の初恋の相手で、刀也は彼女が大好きで大好きで仕方なかった。
刀也とAは幼馴染でいつでも一緒に居たのだから、ソレは当然のことと言えば当然のような気もする。

いつからか刀也は、彼女の為になることならばなんでもしたいと切望するほど、Aに陶酔していた。

例えば彼女は両親がネグレクトの母親だとかDVの父親だとかで、中々辛い日々を送っているのだと刀也に打ち明けたことがある。

確かに彼女は同年代の女の子たちよりもずっとずっと細くて鎖骨とか肋骨とかが浮き出ていたり、身体の色んなところに絆創膏を貼り付けて痛々しく真新しい生傷をよくこさえてきたりしていた。

だから刀也は彼女の両親を交差点へ突き飛ばした。

刀也はなまじ頭が良かったので、何処が人通りが少ない道路なのかとか、どこに防犯カメラがあるのかとか、アレコレ調べて準備をして、物陰から彼等の背中を押した。

なんだか思ったよりも呆気なくて、手に残った生温い体温が気持ち悪くて、目に残った赤とか白とか黒とかの気色悪いマーブル模様と、耳に残ったブレーキ音と骨がへし折れる音と鈍く響く鉄の塊と肉の塊が衝突する音が、未だ幼さを残す刀也の夜を暫く苛んだのは言うまでもない。

碌に調べられもせず火に巻かれたAの両親の葬式で、物憂げな表情のAの手を取って僕はずっとAの側にいるよ、と告げれば、彼女は刀也の大好きなあまぁい笑みを浮かべて嬉しそうに頷いた。

一度やって仕舞えば簡単なもので、刀也はそれからもAの為になることをした。

ビンボウ人だとAを嘲る裕福な家庭で育ったとある少女は階段のテッペンから転落したし、可愛らしいAを助ける振りをして売春させようとした男性教師は工事現場の落ちてくる鉄骨に潰された。

勿論、他人を幾人も手にかけるのは途轍もなく心は痛んだし、血を見るのは気持ち悪かったし、赤黒い彼等の死顔は刀也のトラウマだった。

けれど刀也が居ればAは傷付くことはないし、何時だって刀也はAの直ぐ側に居たので二人は何時でも一緒なのだ。

それでも刀也はなにかが物足りなかった。