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こないでこないで、とヒンヒン泣き叫びながら手当たり次第のものを投げつけるAに、侵入者は思ったよりも弱気な声で応えた。
『や、やめっ、イダッ！？』
『ちょっと！ちょっとぉ！！落ち着いてくださいよ、！』
やっと認識された聴き覚えのあるその声にピタリと動きを止め、Aが恐る恐る塞いでいた目を開ける。
「ぁ、アレ？つきのせんぱい、」
そこにいたのは、謎のチャイニーズな服に身を包んだ我らが生徒会長＿月ノ美兎であった。
容姿端麗眉目秀麗、そしてそのマアマア奇妙な性格で、全校生徒から圧倒的な支持率を誇る彼女は、きっとAの存在は認知していないだろう。
『もう、辞書なんて投げてきて危ないじゃないですか！』
ぷんすか、と常識的に怒る月ノに申し訳なくなりつつも、マッタク今の状況がAには理解できない。
一体何故ココに居るのか、と問えばこの後の種目のために一人校内に戻って準備をしていた、と月ノは答えた。
きっとそのチャイナ服が種目の準備なのであろう、とは思ったが、それにしても何故ワザワザ己のところまで来たのか、と再びAが問えば、月ノはニコリと満面の笑みを讃えた。
なんとなァく、嫌な予感が、Aはした。
『ゾンビだなんて、そんなの、めちゃくちゃオモシロいじゃないですか！』
『私と取り残されちゃった貴女。ここは後輩を助けるべく、私の出番だと思いまして！』
すると彼女はヒョイと逆立ちすると、ぐにゃりとその細い胴を曲げる。
到底フツウの人間にはできないその奇怪な動作に、Aはまた化け物でも見たような情けない泣き声を洩らした。
『もうすぐ昇降口からゾンビさんたちが入ってきそうですけど、私が全部やっつけたげますから！！』
『レッツ・カンフー！！』
そういえば、遠くの扉を叩く音がより一層大きくなっていた。
ガタガタバンバン。ガタガタバンバン。
吐き気を催す呻き声も、随分と増えたようだ。
ヤッパリその音は怖くて仕方なくて、Aは再び泣き声混じりの嗚咽に喘ぐ。
「もう゛おしまい、おしまいだ、しんじゃうんだわたし、ぅ゛、ひ、」
情けなくって不甲斐ないAに、月ノはもう一度勝気に微笑んだ。
『“何時でも自分に負けている人は何も掴めない”、ですよ？えーーっと、』
『スミマセン貴女お名前は？』
「Aですぅ゛！」
泣きながらシッカリ答えたAの返事と同時に、遠くでがちゃんとドアの開く音がした。
＿＿
ギャグ回
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作者名：イタリアン | 作成日時：2023年4月14日 16時
