墓黙り【2j3j】 (ページ18)

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真夏の暑さがしんどいだけ【msr】ページ18

ましろが今日もランドセルをキチンと背負ってその公園に行けば、やっぱり彼女はそこに居た。

今や荒れ果てて誰も訪れないような寂れた公園。

そこに在るペンキの剥げた滑り台のテッペンに、彼女は座り込んでいた。

『Aちゃぁん』

ましろが下から呼び掛ければ、彼女はましろを見つめ返してまっかに塗られた唇で笑う。

それからトントンと滑り台の階段の方を降りる。

「はァい〜」

ましろを見つめる彼女は、Aという名前の高校生のおんなのこだった。

いつも濃いメイクをしていて、髪は何回も染めてキシキシに艶を失った黒髪で、薄汚れた制服のシャツからはくたくたのフリルの付いたブラの肩紐だとか青痣のできた白い腹なんかがチラチラと見えている。

制服のスカートは乱雑に切ったせいで裾のあたりが解れ、
そこから惜しげもなく外気に触れる太ももの白さがましろには少し気恥ずかしかった。

両親の躾が嫌になって家を飛び出し、暴力振るいの彼氏の下に居候しているのだと言う。

彼女はいつでも殴られたり蹴られたりした痕でボロボロだったけれど、彼氏の話をする時は年相応に笑うことがよく合った。
たぶんダイスキなんだろうなと、ましろは幼心に思ったものだった。

確かに彼女からはいつもクサいくらいに強いハッカの香りのする男性用の整髪剤の匂いがしたし、腹底に響くタールの重い煙草の匂いもした。

手にはいつもモンエナとかレッドブルとかのエナジードリンクを持っていた。

別に好きとかいう訳ではないらしいけれど。

そんなちょっぴり不思議なAが、ましろはとっても大好きだった。

クラスの男の子たちが可愛い可愛いと持て囃す同級生の女の子とか、画面の中で歌って踊るアイドルとか、そんなのよりAチャンの方がよっぽど可愛らしいと思った。

今度はブランコに座り込んで前屈みになりながらちびちびモンエナを啜るAの、緩んだ襟首からときたま覗くなまっちろい谷間をこっそり盗み見ながら、ましろはAのお隣のブランコに座った。

『今日はAちゃんなにしてるの？』

そうましろが話しかけると、Aは曖昧に笑んだ。

「ましろチャンに会ってるよぅ」

そうはぐらかすAをもどかしく思うましろは、口を尖らせて擦り切れたスニーカーの爪先で砂をちょんと蹴る。

そんなましろを横目に、Aはずこーと音を立ててモンエナを啜りながら、いつも通りちいさく口角を上げるのだった。