墓黙り【2j3j】 (ページ12)

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唐突に部屋の奥に引き寄せられたAの美しく輝く髪の残光と、ちらりと窓枠に映る仄灯るいローズバイオレットの輝きを見上げて、彼等はアーアと溜息をついた。

『Aちゃん、またトウヤに捕られちゃった』

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『起きたんですね』

そう言って理知的な美しい微笑を浮かべるトウヤを、Aは見つめた。

その笑みにAはなにか胸の奥の方がきゅうと音を立てた、気がした。

ソレはインクルージョンの不具合かもしれないし、A自身のなにかがトウヤの笑みによって締め付けられているのかもしれない。

Aの躰は隅から隅まで唯の宝石の塊だというのに。

「ひさしぶりだね、トウヤ」

うっとりと輝く笑顔をAは浮かべる。

久方振りに見た、その笑顔にトウヤは見惚れた。

そうっと握った手に力を込めれば、Aの脆い宝石の掌はキリキリと嫌に高い音を立てて削れていく。

余りに儚いその鉱石に、トウヤの口角が思わず上がった。

それはトウヤの奥底に隠された、歪んだ(ひずんだ)情慾の表れとも見てとれた。

「ごめんねぇ、こんな、普通の生活もできなくて」

白粉の剥げてきた己の手元を見つめて、Aは物憂げに呟く。

ふと、未だ白粉がキレイに残るトウヤのほっそりした指先が、Aの顎を掬い上げた。

Aの美しいかんばせが、刀也の涼しげなそれと重なった。

カチン

かたい音が鳴る。

一瞬触れただけの彼等の唇は、硬度の低いAの方からぱらぱらと小さく崩れた。

大昔に読んだ太古の生物の“恋愛小説”で用いられていた接吻の音より、それはずっと神聖で美しいものに、Aには思えた。

『はは、ごめん、砕いちゃった』

Aのヒビ割れた口元に指を滑らせるトウヤはくつくつと喉を鳴らせるような笑い声を立てていて、それだけでなんとなく、Aはすべてのことが許せる気がした。

口が砕けてものが言えないので、そっと目元を和らげて笑ってみせるAがいじらしくてかあいくて、トウヤはそれから暫く、Aの割れたそこをその指で撫ぜていた。