短編集**Jr. SZ JW

夢に　佐藤勝利 ページ38

「勝利、調子どう？」



そう言いながら部屋に入ると、あのハスキー声の返事はなかった。


代わりに聞こえてくるのは、「すぅ、すぅ」と言う熱っぽい寝息。





「寝ちゃったか」



私は静かにドアを閉めてベッドに歩み寄る。




布団で隠れかけたその頬は、普段よりいっそう赤みを増していて

そっと触れるとやっぱり熱い。




なかなか熱下がらないな…ちゃんと薬飲んでるのに。



なんて思いながら、おでこを冷やしていたタオルを取り替えていると






勝利「A…？」




彼の長いまつげと、まぶたが重そうに開いた。






「あ、ごめん。起こしちゃった？」



勝利「ん…大丈夫。」




そう言う勝利は少し苦しそうに呼吸をして、うるうるした瞳をこちらに向ける。





「食べたいものとかある？…なんかしてほしいことあったら言ってね」



勝利「ん」




鼻が詰まってうまく返事ができないようで、何かを訴えるように私を見つめた。


眠そうにまばたきをしている。





勝利「Aー。」



しばらくして、鼻声で呼びづらそうに私を呼んだ。





勝利「してほしいこと、ある」



「なに？」





油断していた私の片手は、いつのまにか熱を持った勝利の手に握られていて。





勝利「夢に出てきて」






彼はいたって真面目な表情で、どこか寂しそうに言った。






「えっ…と」





私が返事に困っていると



冗談だよ、と弱々しく笑った。





勝利「…じゃあおやすみ」


「う、うん」







・









Aが部屋を出てから、さっきまで握っていた手を見つめた。



薬の副作用は眠くなるだけで、夢を操る手助けはしてくれないから

仕方なく目を閉じてきみの姿を浮かべる。




…どうやったら夢に出てきてくれるの？




うつろな意識の中でも、確かにきみは存在するのに。



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リサ様リクエスト

初リク感謝です！ネタが尽きているので他の読者様もリクエスト下さると助かります(´`)

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