短編集**Jr. SZ JW

わがまま処方　佐藤勝利 ページ37

数時間ほど前の『熱出た、たぶん風邪』ってそれだけのLINE。


看病しに来いって合図かと思って来たら…。






・






勝利「そろそろ病院いこう」


「やだ」



勝利「薬くらい飲んでよ」


「やだ」





俺の彼女は、風邪とわがままを併発したようだ。…まあ、これは初めてじゃないんだけど。


症状としては、何でもかんでも「嫌だ」と答えること。






勝利「…もう俺帰るよ？」







粘る意地っ張りに俺が痺れを切らしたその瞬間、

彼女は布団を剥いで走り出し





「それもやだ！」



ドアノブに手をかけた俺を引き留めた。



この握力と目力、ほんとに病人なのか？







ドアノブから手を離し、向き直る。


そして、静かに呟くのだ。





勝利「わがまま。」



デコピンの一撃を喰らわせると、Aは一瞬黙って縮こまった。




「素直なだけだし」




そんなわがまま患者には、自覚が無いケースが多い。





勝利「じゃあこれで注意されたのは何回目ですか。」



「…ごめんなさい」




俺と身長はそれほど変わらないのに
心なしかAは小さくなった。


俺は続ける。




勝利「風邪を治すまでは外出禁止、デートももちろん禁止。俺と会う頻度も減らす」


「…はい。」


勝利「それが長引くのと、今すぐ病院行って薬飲むの、どっちを選ぶ？」


「病院いきます…薬も飲みます。」


勝利「素直でよろしい。」




すっかり俯いて小さくなってしまったAは、俺の表情をうかがうようにそっと顔を上げた。




俺はそんなAに笑ってみせて




勝利「わがままも風邪と一緒に治してもらおうか」



デコピンの跡地を撫でてみる。

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