だいすきはっぴーついんたわー

＃２ ページ37

今日の目覚めというのはほんまに最悪なものやった。

いつもはもっと遅くにくる泥酔したアホからのLINE。



『いまからのみませんかあ』



漢字変換もままならない、でろんでろんに酔っ払った重岡が、ピントのあっていない自撮り写真を送りつけて来た。


いつもは酷くても4時は必ず過ぎてくれるこのLINE。

日時を見たら普通に驚いた。3時半。

今更寝れる気もしないが、この朝まで飲み腐ってるバカどもの飲み会に混ざろうとなんか思わへん。

嫌味のように既読だけ付けて、すぐ閉じた。


そんなとき目に触れた雑誌の表紙。

『ウォーキング男子』と書かれた見出しに、ありきたりな緑の中、笑顔で歩く1人の男。


生憎、我が家の周りに緑なんかないが、代わりに海辺にでも行こう。


なにも持たずに戸締りだけして家を出る。

春やと言えど、朝は寒いもんや。
パーカーくらい羽織ってこれば良かったかも知らん。


ただでさえ人通りの少ない道が、3時半なだけあってもっと寂しく感じる。


もうすぐ海が見える。


そんなとき、浜辺に1人ポツンと突っ立っているのが見えた。


こんな小さな浜辺、誰か来るんや。

少なくとも、俺が今までここに来た中で、ここで誰かと出会ったことなんかなかったから、興味本位で話しかけようとした。


すると、こちらが話しかける前にふわりと髪をなびかせて振り向いた彼。



「……今日ここで、彼女が死んだ」



はっきりと聞こえたその言葉。

くっきりと見えた、彼の顔。



笑っていた。

彼とは初めて会ったけれど、わかった。


心の底から笑っているんやと。

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