ひとときの愛おしさを、君と【短編集】 (ページ2)

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好きと言ってページ2

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「すっ……」

ここまで出てその後の自分を想像すると怖くなって言葉が出なくなった。
たまたまメンバーとの会話で出た【彼女に好きって言ってもらおう】という話題。

「すーなに？」

「えっ、」

「えっ、はこっちのセリフなんですけど。なあに？好き？知ってる〜♡」

違う、そっちじゃない。
そう思えば彼女からちゃんと目を見て最後に好きと言われたのはいつだろう。基本彼女は俺を【可愛い】と言う。夜のそういう時とかは絶対反射で言ってるし。

さっきから洗い物をしながらも不思議そうに俺を見る彼女。これはもう俺が腹を括るしかないようだ。

「あの…さ、……って……く…せ……か」

「ん？ごめんなあに？」

最悪。

「水で聞こえなかった」

ねえー、と水を止めて騒いで言うから俺はまた同じことを言った

「…好きって言ってくれませんか」

「……え？」

困惑そうな声を出すも彼女の顔を見れば今にもなくなってしまうのではないかと心配になるくらいとろけていた。

「何その顔」

「あんな言ってるのに足りなかった？！」

すぐに洗い物をやめて、手を拭いたあとご機嫌そうに小走りでソファーに座る俺のそばに向かってきた。

「いでで、痛てぇよ」

勢いよく俺の上に乗ってきた彼女。バランスを崩しながらも受け止めて両手で抱き抱えた。

「ね！もっかい！もっかい言って！」

「むり〜」

「じゃあ私も無理〜」

「なんでだよ」

もうニヤニヤして顔が戻らない彼女。その顔を両手で挟み早く〜と唸った。

「幸せ死しそう」

「言ったらキスするだから…」

「好きって言われたいしキスもしたいの？ねえ、ほんと可愛い」

「可愛くない。」

俺の低い声に機嫌をうかがい始めた彼女に気づき、また俺は同じ言葉を口にする。思ったより俺は彼女に甘いのかもしれない。

「A、好きって言って」

「っ……好き、だよ」

「……、」

こんなにも、好きと言われると嬉しいものなのか。
いつも元気よく俺に可愛いと言ったり愛を叫ぶ彼女だけど言い終わって顔を隠してしまった。

「なんか言って！」

なかなか見れない照れてる彼女。この言葉に返せる言葉が3文字しか出てこない

「…俺も」

そんな俺に彼女はいつも同じ言葉を返す。それにため息をついて更に抱きしめて言葉を返す

「俺も…なに？」

「…俺も大好きだよ」

「ひひっ、」

たまにはこんな日も悪くない。
ぎゅっと抱きしめた彼女の身体はいつもより暖かく感じた。