103 ページ17
.
別に隠れる必要はない、なんて思いながらもすくむ足。
ふたりから目を逸らしたいのに、じっと見続けてしまう。
背の小さいその女の子が背伸びをして優太くんの目線に合わせたと思えば
優太くんも少しかがんで背丈を同じにする。
重なる顔が、キスをしている…ように見えた。
少し遠くてはっきりとは見えなくて
だけど、お互いの距離の近さに、ズキン、と胸が痛んだ。
ふたりの顔が離れると、そのまま優太くんはその子に支えられながら店内へと戻っていった。
数分間、固まっていた思考が、冷たい風によって我に返ってぐるぐると動き出す。
見間違いだよね？
キスなんてしてないよね？
遠くから見えたそのふたりの親密そうな雰囲気に胸が押しつぶされそうだった。
このまま帰ってしまいたいけど、行くといった返事を今さら変えることはできないから
痛む心をごまかして、笑顔をつくってからその扉を開いた。
『こっこんばんは』
「あっ、A！！」
座敷の壁にもたれていた優太くんが私を見るなり立ち上がる。
ふらふらとした足取りで私のところへ来ると、ふわっと笑って、おいで、と手を差し伸べられる。
ドクン、と胸が高鳴って、さっきのシーンが頭に浮かんではズキン、と痛む。
「その子が岸の彼女〜？」
「えっ、お前の彼女なの？可愛すぎんだろ！！」
すでに優太くん含め、友達もみんな出来上がっているようで、聞き取れないほどに騒ぎ立てられる。
「うるせ〜なぁ！俺のだからみんな触んなよっ」
ぎゅ〜っと力強く抱き締められたことに気付くと、慌てて優太くんを押し返す。
『ちょっと優太くん！』
「んん？…ごめん〜、でも俺のだし…」
謝っておきながら、反省の色が見えない優太くんは
ぎゅっと私の手を握って隣に座らせられる。
中央に座る私の目の端のほうに、あの女の子のニコニコしている姿が映った。
どうしてふたりとも、そんな普通でいられるの？
「ごめんね〜みんな酔っ払ってて！」
そう言った目の前に座る男の人が自己紹介をすると、続けるようにみんなが自分の名前を言っていく。
そのときに、その女の子の名前が和花さん、だということがわかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2315人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
hinata(プロフ) - すかいさん» お読みいただきありがとうございます！岸くんのお世話係ですのほうでもコメントくださって、とても感激しております…！ 更新は停滞しておりますが、他作品でも機会があればよろしくお願いいたします！ (2020年3月14日 11時) (
レス) id: ef05115d0f (このIDを非表示/違反報告)
すかい - コメント失礼します！とても素敵な作品で、読んでいた幸せな気持ちになりました。ありがとうございました^ - ^ (2020年3月14日 2時) (レス) id: c9cd880fe4 (このIDを非表示/違反報告)
hinata(プロフ) - ぷーちゃんさん» はじめまして！うわぁありがとうございますっ！！読んでいただいてる人が情景を浮かべられるように書くのを心がけていたので、そう言っていただけると嬉しいです(T^T)最後までありがとうございました！！ (2019年8月25日 2時) (レス) id: 3e3d9afca9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷーちゃん(プロフ) - 初めまして、岸くんも廉くんもかっこよすぎて平野担なのに恋しそうでした‥笑 とても読みやすく背景が想像出来るような内容でとても楽しかったです！！ (2019年8月21日 18時) (レス) id: f5805a4cc2 (このIDを非表示/違反報告)
hinata(プロフ) - ゆかさん» ありがとうございます(T^T) 私の作品が好きだと言っていただけることが何より嬉しいです！！新作ができた時には、またぜひよろしくお願いします！！ (2019年8月11日 0時) (レス) id: e06037eac2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：hinata
| 作成日時：2019年4月22日 17時
